no title | ナノ


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夜。

あの後、事の経緯を話す羽目になった***はセバスチャンに連れられ、シエルの部屋の前にいた。

「しばらくこちらでお待ち頂けますか?」

ポンポンと頭を撫でられ、***は小さく頷く。
それを確認して、セバスチャンはシエルの部屋へ入って行った。

『むぅ…』

パタンと閉められたドアを見つめ、***は部屋から持ち出したビターラビットを抱き締める。

『・・・はめられた』

喋りたくなかったのに。

でも、誰かに聞いて欲しかった。

何か矛盾してる、と呟きながら***は壁に背を預け、ズルズルとその場に座り込んだ。






「***様、宜しいですよ」

しばらくして、ドアからセバスチャンが顔を覗かせ、***を呼んだ。

『何かあった?』

バラバラと床に散らばる書類を避けながら歩く***に、シエルは小さく「別に」と呟いた。

「で、***はどうしたんだ?」

自分の横を叩き、ベッドに座るように促しながら、シエルは***に問い掛ける。

『あのね、えっと…』

少し遠慮がちにベッドに腰掛けながら、***は言葉を続けようとするが、中々言葉が出て来ない。
けれどシエルもセバスチャンも急かす事なく、***の言葉を待った。
やがて少しの間、宙を仰ぎ***はゆっくり喋り始める。

『このお屋敷ね、来た時からずっと血の匂いがしたの』
「血の、匂いだと?」
『うん。誰かが怪我した…とかじゃない、たくさんの人の、ね
 で、それが今朝また濃くなったから、その人が事件の犯人かもって思って…』
「まさか聞きに行ったのか!?」
『ち、違うよ!すれ違った時に判っちゃって…その…』

―何して来たの?って言っちゃったの。

多少マズかったと言う自覚があるのか、***の声の大きさが一気に下がった。

「〜***っ!」
『わぁぁっ!ごめんなさいっ!!』

立ち上がったシエルに殴られるのかと、***は慌ててビターラビットで盾を作る。
しかしシエルは溜め息を一つつくだけで、またベッドに腰を下ろした。

「***が犯人を知ったとは聞いたが…まさかこんな経緯だったなんて…」
「私も聞いた時は驚きましたよ。でも***様らしいじゃないですか
 何せ私に『本当に人間ですか?』なんて聞くような方ですからね」
『あわわっ!執事さん、それはっ!』

懐かしい話を持ち出されて***は顔を真っ赤にして、ビターラビットを振り回す。
ちらりと横を見ればシエルが「呆れました」と言う顔でこっちを見ていた。

『これからは…気をつけます』

少し不服そうに呟き、***は大人しくベッドに腰を下ろした。

「さて、どうしますか?次の被害者の予測はついていますが」

タイミングを見計らい、セバスチャンが口を開く。

「そうだな…」

しばらくシエルは考え、ふと横にいる***を見た。

「…連れてくべきか?」
「そう、ですね」
『え?』

てっきり留守番だと思い込んでいた***は驚きの声を上げた。


予感と買い物と・・・ END
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