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『…どうしよう』
部屋に戻る気が起きなくて、フラフラと屋敷の中を歩き回る。
どうせ部屋に戻った所で、この匂いからは逃れる事は出来ないのだから。
それに誰か判ってしまったせいで、部屋にいたら監視されている気分になりそうだった。
「こんな所にいらしたんですか」
『執事、さん?』
何でこんな所に?と***が聞き返せば、セバスチャンがうっすらと笑みを浮かべた。
「それはこちらの台詞です。
お部屋にいるとお伺いしたのですが、いないから探しましたよ」
『あ…ごめんなさい』
シュンとうなだれる***をセバスチャンは不思議そうに眺める。
元気がない、と言うより何かを隠しているのがバレバレだ。
「何かありましたね?」
『えっ、そんな、事は…』
「大方…この匂いのせいでしょう?」
『!!』
予想通りの反応を見せる***にセバスチャンは僅かに口角を上げ、***の手を引く。
『執事さん?』
「何があったか…お部屋でお話して頂けませんか?」
折角ご用意した紅茶も冷めてしまいますし。
そう付け加えれば、***も困ったように笑いながら、そっと手を握り返した。
「マダム達と街に出て何かあったのですか?」
少し温くなった紅茶を口にした***に問いかける。
その問いかけに***は小さく首を横に振った。
「では何が『街で、じゃないです。ココで、です』
セバスチャンの言葉を遮るように***は小さく、だけどハッキリした声で言い切った。
「ココで、ですか?」
『帰ってきてからです。その、何て言うか偶然の産物・・・ですけど』
小さな声がさらに小さくなり、呟くような音量まで下がって行く。
そして最後には俯いて、黙り込んでしまった。
「・・・(困りましたね)」
とりあえず屋敷内で何かがあったのは判ったが、その何かが結局判らない。
***は塞ぎこんで、自ら喋ってくれる気配も無い。
仕方が無いので、セバスチャンから話題を振ることにした。
「そう言えば***様。切り裂きジャックの犯人の件なのですが」
『っ!?』
―なんて判りやすい
「***様?何があったか・・・お話ししていただけますね?」
『うぁ、あの・・・その」
あからさまな反応を見せてくれる***に、セバスチャンは内心苦笑いを浮かべた。
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