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『…つ…かれた』
前より疲れたのは気のせい?
いやいや、今回は多分別の疲れじゃない?
一人グルグル頭を悩ませながらそんな事を考える。
疲れた表情の***とは真逆の表情でマダムは先を歩き、そばを歩くグレルが時折こちらを顧みる。
その度に***は、大丈夫と言う意味を込めて少しだけ笑い返していた。
既に買い込んだ服は前にシエル達と来たときの数を超えている。
疲れとは別に、クローゼットに服が入りきるか***が考え始めた頃、ようやくマダムの足が止まった。
「ココで最後よ」
そう言い入って行った店は今までとは違い、暗くて静かな雰囲気を醸し出していた。
置いている洋服も黒一色で、華やかさとはまるでかけ離れている。
「この子に合うのを一式見繕って頂戴」
『マダム?ココは?』
マダムに呼ばれてやって来た店員の採寸を大人しく受けながら***が問う。
「喪服。…お葬式の時に着る服って言えば判るかしら?」
人はいつ死ぬか判らないから…1枚くらい持っていた方が良いと思ってね。
そう言うマダムの瞳は悲しそうで、***は何も言わず口を閉ざした。
「この辺りは如何でしょうか?」
採寸を終えた店員が何着か服を取り出し、二人に見せる。
それをマダムがほぼ独断で取捨選択を繰り返し、最終的には***が2択で選ぶ。
そこから更に靴や鞄を買って、長い買い物が終了した。
「降りそうだったけど間に合ったわね」
『…うん』
ついさっき降り出した雨を眺めながら、***は曖昧に返事を返す。
買ってすぐに読みたかった本もなかなかページが進まない。
「***…大丈夫?」
『ん〜少し…疲れたかも』
そう言えばマダムが部屋で休むように促す。
実際疲れていた***は素直にその言葉に従い、ヨロヨロと本を片手に立ち上がった。
「あ…お部屋にお戻りですか?」
ドアの近くでティーセットを持ったグレルと鉢合う。
「そうなの、疲れてるみたいだから。グレルそこ通してやって」
「あ、は、はいっ…どうぞ」
『…ありがとうございます』
わざわざ開けて貰った道を、***は小さく会釈をしながら通り過ぎる。
その様子を心配そうに見つめるマダムとは違い、グレルは睨むような目で見ていた。
「マダム、ちょっと良い?あの子の事なんだケド」
パタンとドアが閉まると同時にグレルが口を開いた。
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