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「なんだ!?」
突如消えた照明にどよめく人々。
次の瞬間、彼らは皆何者かに殴られ気を失った。
「やれやれ
本当に捕まるしか能がありませんね、貴方は」
再び照明が灯され、そこには呆れた顔のセバスチャンがいた。
「呼べば私が来ると思って不用心すぎるのでは?」
「僕が契約書を持つ限り、僕が喚ばずともお前はどこにでも追って来るだろう?」
「…もちろん」
―「契約書」は悪魔が契約人を見失わぬ様につける「痕」
―「契約書」は目につく場所にあればある程強い執行力を持つ
―そのかわり
―絶対に悪魔から逃れられなくなる
「どこへでもお供します、最期まで」
いとも簡単にシエルを閉じ込めていた檻を曲げ、恭しくセバスチャンが言う。
「たとえこの身が滅びようとも私は絶対に貴方のお傍を離れません
地獄の果てまでお供しましょう
私は嘘は言いませんよ、人間の様にね」
スッとセバスチャンが指を動かせば、シエルの縄がブツンと切れる。
「…それでいい
お前だけは僕に嘘をつくな、絶対に!」
「御意ご主人様。………おや?」
「どうした?」
すっと動いたセバスチャンの目先を追いかける。
その先にいたのは、まだ目隠しも外されずに檻の中にいた***の姿。
「***様、ですよね?」
「…あぁ。そこから出してやってくれ」
「ご無事ですか?」
『やーっと聞こえる』
セバスチャンの問い掛けに、漸く自由になれた***が不機嫌そうに答える。
今まで何も聞こえないのが相当苛立ったのか、***の足下には耳栓"だったもの"が転がっていた。
(やったのは***本人だ)
「全く…少しは気をつけろ」
『う、うん・・・?』
「貴方が言えるんですか?それは」
「……」
セバスチャンの突っ込みをシエルは聞こえなかった事にした。
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