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『ん、…ん?』
ユルユルと浮上して来た意識は、体の違和感を覚えて一気に覚醒する。
いつの間にか手を縛られ目隠しを付けられ、更には耳栓まで付けられている。
そして少し体を後ろに倒せば、カシャンと金属の柵にあたる感覚がした。
(闇オークション?)
辺りを見渡しても、首を傾げても、視覚と聴覚が無いから断定は出来ない。
だけど昔も一度だけ同じ事があったから、ほぼ間違いないだろう。
流石にあの時は、耳栓までされなかったような気がするけれど。
黙っていれば目隠しは取って貰えるはずだったと***は大人しく、その時を待つ事にした。
ほぼ同時刻の同じ場所。
調査の名の元にドルイット子爵邸に乗り込み、そのまま捕まったシエルがいた。
商品としての自分の説明を聞きながら、彼は状況を判断していく。
「では此所でもう一つ目玉商品をご紹介しましょう」
突如、シエルの思考を妨げるような子爵の声が飛ぶ。
「こちらもかなりの商品です。今すぐにお見せしましょう!」
バサッと布がひっばられる音。
それを見た客達のざわめく声。
所々で殺人猫と呟きが上がる。
(まさか?)
嫌な予感がするとシエルは眉間に皺を寄せた。
「…分かった方はお目が高い!あの事件で行方不明になっていた完全体になります
言語も知能も問題なし、本来の事に使うか、別の事に使うかはお客様次第
今晩はこの目玉商品をペアで、ご提供させて頂きます!」
子爵の言葉にシエルの予感は的中する。
恐らくこの場に間違いなく、***がいるのだろう。
しかも商品として売りに出されている。
きっと自分と同じように目隠しをされているだろうが、それが外されると非常にまずい。
(全く……)
誰にもバレないように溜め息をつくと、カツンとヒールの音が背後で鳴った。
すぐ近くでは子爵がオークションの開始を告げる。
提示される数字が何度も更新される中、シエルの目隠しが音も無く落ちた。
「さあもう次はいらっしゃいませんか?」
数字の上がりが緩やかになり、子爵が問い掛ける。
その様子を見ながらシエルはゆっくりと口を開いた。
「セバスチャン、僕はここだ」
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