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―1時間後
「さて残すは伯爵のみだよ」
後ろで発言禁止マスクを付けられ、ブーブー文句を言う二人を無視して葬儀屋が笑う。
「前回はチョットおまけしてあげたけど…
今回はサービスしないよ
それか…***を貸してくれたら話すよ
この子眠たそうだし?」
そう言い、膝の上でうつらうつらと眠そうにしている***を指差す。
“1時間耳塞がれてて、何にもする事無いから眠たくなったんだろうね。”
なんて他人事のように言いながら。
「くそ…」
葬儀屋を笑わせる「笑い」はない。
かといって***を貸すのは気に食わない。
シエルが葬儀屋に返す言葉が見つからず、困っているとフッと目の前に誰かが立った。
「セバスチャン!?」
「仕方ありませんね」
セバスチャンは手袋をはめ直し、葬儀屋と向かい合う。
「へぇ…今回は執事君が何かしてくれるのかい?」
「みなさんどうぞ外へ」
「セ…セバスチャン」
「絶対に中を覗いてはなりませんよ…」
葬儀屋とシエルの言葉を綺麗に無視して、セバスチャンは皆を外に促す。
その時彼が呟いた言葉にシエルは引きつり笑いを浮かべながら、***を外に連れ出した。
『何で外?』
ぱたむ。と閉められたドアを眺めながら***がぼやく。
半分寝ていたから、話を知らないのだろうとシエルが説明しようとした時、中から大きな笑い声が聞こえて来た。
葬儀屋の看板を傾かせる程の笑い声はしばらく続き、その声が静まってからドアが開いた。
「どうぞお入り下さい
お話して頂ける様です」
目茶苦茶良い笑顔でシエル達を出迎えたセバスチャン。
その後ろには、笑い過ぎの為痙攣を起こしている葬儀屋の姿。
「さて…話の続きだね、ぐふっ…
なんでも教えてあげるよ…」
「何したんだ…(小声」
「いえ大した事は(小声」
『…』
小声で話すシエルとセバスチャンの影に隠れて、***は変質者だと言わんばかりの目で葬儀屋を見た。
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