(3/9)
「…さて。すっかり忘れてたけど
聞きたいのは切り裂きジャックのことだろう?
今ごろになってヤードは騒いでいるけれど…
小生がああいうお客を相手にしたのは今回が初めてじゃないよ」
骨型のクッキーを囓りながら葬儀屋が語る。
「初めてじゃない?どういうこと?」
「昔から何件かあったんだよ、娼婦殺しが」
マダムの質問に、葬儀屋がクッキーをシエルに勧めながら答える。
「ただどんどん手口が派手で残酷になっている
最初はそんなにスプラッタじゃなかったから警察も気付いて無かったけど
ホワイトチャペルで殺された娼婦には共通点がある」
「共通点?」
「…ですか?」
「さてねぇなんだろう、なんだろうなぁ
気になるねぇ…」
シエルとセバスチャンの反応が思惑通りらしく、葬儀屋はニヤニヤと笑う。
今まで葬儀屋の膝の上に座り、大人しくクッキーを囓っていた***は、嫌な予感がすると顔をしかめた。
「成程ね、そういうことか
葬儀屋は『表の仕事』という訳ね
いくらなんだい?その情報は」
「いくら?」
『…ぁ』
言ってはいけない言葉を劉は言った。
***の予想通り、劉のその言葉に葬儀屋はピクリと反応した。
ただ***の予想と違ったのは、葬儀屋が自分を抱えて劉に迫って行った事だった。
「小生は女王のコインなんかこれっぽっちも欲しくないのさ
さあ伯爵…小生にあれをおくれ…
極上の『笑い』を小生におくれ…!!
そうしたらどんなことでも教えてあげるよ…!!」
『苦しい…』
「…変人め、***が可哀想だ」
シエルの意見に同感なのか、セバスチャンは何も答えない。
ただ葬儀屋の腕の中で酷く迷惑そうにしている***を見て、僅かに顔をしかめた。
「伯爵
そういうことなら我に任せなさい
上海では新年会の眠れる虎と呼ばれた我の真髄
とくとごらんあれ!!」
ジャーンと効果音付で登場した劉だが、彼の寒いギャグにその場は白ける。
(おまけに***がポソッと面白くない、とまで呟いた)
「だらしないわね劉…***も呆れてるじゃない
仕方ない、社交界の花形このマダム・レッドがとっておきの話を聞かせてあげるわ!」
「***は聞かなくて良いからね(小声)」
『?』
マダムの登場と同時に葬儀屋に囁かれ、そのまま***は耳を塞がれる。
見ればシエルもセバスチャンに耳を塞がれていて、同じような状況になっていた。
<< >>
《目次へ》