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「まさか葬儀屋が***を助けた奴とはな…」
「も〜、小生もびっくりだよ。***の住んでる先が伯爵の所なんて」
『二人は知り合いだったんだね』
彼‐葬儀屋‐とシエルを見比べながら***は一人納得する。
そして後ろから自分を抱き締めている人物に視線を移した。
『あの?』
「ん?なんだい?」
『離して…貰えないですか?』
「そうだねぇ…」
糸目の表情の読めない男は悩む素振りをするが、離してくれる気は無いらしい。
その証拠に***を抱き締めている腕の力は弱まらない。
「君も我と同じ東洋人みたいだし、少しぐらい仲良くしないかい?」
『…』
仲良くしないかい?
と言っても、離してくれる気が無いくせに。
そんな事を思いながら***は、誰か助けてくれないかと視線を動かす。
シエルと葬儀屋は話し中だし、セバスチャンは少し距離がある。
となると話をしていなくて、距離もそんなに離れていない人物に***は助けを求める事になる。
『マダム〜…』
条件に一致したマダムを小さな声で呼ぶ。
が、余りに声が小さ過ぎたのか、マダムはこちらに気がつかない。
仕方が無いからもう一度。と思った時、マダムの側にいたグレルが気が付き、マダムに知らせてくれた。
「***!ちょっと劉!あんた何してんのよ」
「え?何って我はこの子と仲良くしようかと」
「だからって初対面で抱き付くの?!ほら***、こっちにいらっしゃい」
つかつか歩いて来たマダムは***を劉(と言うらしい)から引き剥がし、自分の方に抱き寄せた。
「久し振りね、***」
『お久し振り、です。それからグレルさんも』
「お…お久し振りです」
この間はどうも。と***はマダムの腕の中でお辞儀する。
『それから…えっと』
「我は劉だよ。***」
『劉さん、初めまして』
さっきと同じようにマダムの腕の中で***はペコリとお辞儀をした。
「相変わらず細いわね…ちゃんと食べさせて貰ってるの?」
『っひゃぁ!?』
スススッ…と***の腰のラインを撫でながらマダムがぼやく。
横ではグレルが奥様!?なんて慌てているけど、マダムは聞いちゃいない。
「もぉ食べる物食べなきゃ、出るとこ出ないわよ?
ちょっとセバスチャン?」
「はい?」
突如名を呼ばれ、一瞬驚いた後、セバスチャンがこっちにやって来る。
マダムは***を突き出し、ちゃんと食べさせてるの?なんて問い掛けた。
「***様ですか?お食事ならちゃんと召し上がられていますよ?」
「あらそう、だったら良いわ」
突き出された***を預かり、セバスチャンはさらりと答えた。
問題が解決して、マダムが静かになった所で、***が口を開く。
『ねぇ、なんで皆はここに来たの?』
「「「「…あ」」」」
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