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「あ、そう言えば」
揺れる馬車の中でマダムが口を開く。
「あの子がいないけど、置いて来たの?また会いたかったのに」
「そう我も気になっていたんだよ。我はまだ会ってないからね」
「あー…」
***の事を指摘され、シエルは馬車の外に視線を向けながらポツリと言った。
「今ごろこの街のどこかにいるはずだ」
『やっと着いた……』
大通りから少し離れた所に***の姿はあった。
久し振りに人の波を渡ったのはだいぶ堪えたのか、少し息が荒い。
『シエルに言われた通り、送って貰えば良かったかも…』
―ロンドンに行くなら、助けてくれた恩人の家に行きたい
そう言い出したのは***だった。
その発案にシエルは家まで馬車を手配すると言ったが、***は近いから良い、と断ったのだ。
『着いたから良いか…それよりも覚えてくれてるかなぁ…』
少し不安を覚えながら、***は目の前の扉に手を掛けた。
街屋敷にて END
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