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(2/5)

部屋に漂うアールグレイの香り。
しかしその香りと違い、部屋に漂う空気は真剣味を帯びていた。


【切り裂きジャック】
 ジャック・ザ・リッパー


数日前から新聞が騒ぎ立てている殺人事件の犯人の呼び名。
その事件の被害者は、原形を取り留めない程切り刻まれているのが特徴だ。
ただの殺人では済まされないそれに"彼女"は嘆き、シエルが街まで出て来た。

そこまでシエルが話した時、劉が口を開く。

「女王の番犬が何を嗅ぎ付けるのか
 我はとても興味深いな



 君にあの現場を見る勇気があるのかい?」
「…どういう意味だ」

表情の読めない劉にシエルは聞き返す。

「現場に充満する闇と獣の匂いが同じ業の者を蝕む
 足を踏み入れれば狂気に囚われてしまうかもしれないよ」

今まで掛けていたソファから腰を上げ、劉はゆっくり足を進める。

「その覚悟はあるのかい

 ファントムハイヴ伯爵」

そこで言葉を切り、シエルの頬に手を添える。
同時にシエルの眼光が鋭くなる。

「僕は"彼女"の憂いを掃うためここに来た

 くだらない質問をするな」

凛とした声で言い切るシエルに劉は

「―いいね、その目だ」

そう返し……


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