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「で、こちらに?」
『ダメですか?』
フライパンを操作するセバスチャンを眺めながら、少し***は首を傾げる。
やる事も無いし、本を読むのも少し飽きたし、シエルは何か真剣に考え事らしく相手をしてくれない。
タナカとお茶を飲むのも良いけど見つからない、かと言って他の使用人達は仕事中にそばにいると危険極まりない。
結果、選択肢はセバスチャンの元に行くしか残らなかった。
「ダメでは無いですが…」
自分を見つめてくる黄色の瞳を眺める。
―ここも危険ですよ?
そう繋がるはずの言葉は爆発音によってかき消された。
『っひゃぁ!?』
「今度は何です!?」
『え、今度って?……あれ?』
パッと横を見るがセバスチャンはそこにはもうない。
『…どうしよう』
1、仕方が無いから待ってみる
2、仕方が無いから部屋に戻る
3、仕方が無いから後を追う
頭に浮かんだ選択肢を考えてみる。
3、後を追って巻き込まれるのは面倒。
2、部屋に戻ってもする事がない。
『待ってみよう、かな?』
それが***の出した答えだった。
しばらくして帰って来たセバスチャンは***を見るなり「ランチのメニューが変わりましたよ」と呟いた。
『バルドが?』
「えぇ」
相当苛立っているのか、どうしてまともな料理一つ作れないんですかね、なんて彼の呟きを***は聞かなかった事にした。
「さて、オーブンも温まりましたし
さっさと仕上げてしまいましょう」
『お砂糖?』
「えぇ、そうです」
どさっとセバスチャンがブラウンシュガーを取り出す。
後は天板にブラウンシュガーを広げれば良いのだが。
―どーーん!
突如現れたフィニのタックル(?)によってブラウンシュガーは辺りに散らばってしまった。
『フィニ…』
「…今度は貴方ですか…」
もう驚く気力も無いのか疲れた表情でセバスチャンはフィニを見る。
その後、泣いたままのフィニを引き連れ、またしてもセバスチャンはいなくなってしまった。
『…部屋に戻ろうかな』
余り此所も落ち着けない、と***は散らばった砂糖を片付けてその場を後にした。
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