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「待て」
新聞から顔を上げ、シエルが***を呼び止める。
反射的に振り返った***と初めて目が合った。
「目を逸らすな」
『な、なに?』
「一方的に自分の言いたい事だけ言って消えるつもりか?」
『それは…』
「声が震えているぞ」
指摘されて黙り込んでしまった***にシエルは溜め息をついた。
「誰が嫌だと言った?
誰がココにいるなと言った?
全部***の思い込みだろう?
それに昨日コレを手に入れた」
引き出しを開けて取り出したのは数枚の紙。
『それは?』
「***の情報だ。昨日のCordNameとやらも書いてある。他にも色々」
『それ読んだんでしょ?だったら!尚更、あたしはいない方が!』
「***、落ち着け」
***を手で制し、シエルはイスから立ち上がる。
「仮にココを出て行ってどうするんだ?
裏じゃ情報が出回ってるんだ、大方その手の奴等に掴まるのがオチだろう。
その点、ココに居ればそういう手から逃れることが少しは出来る。
だからココにいろ。
それに…僕は***と敵対関係になりたくない」
『え?』
いとも簡単にサラリと言われてしまったその言葉に***は思わず声を上げる。
対するシエルは自分の発言に気がつき、恥ずかしさから小さく舌打ちをした。
『…いても、良いの?』
「誰も出て行けとは言ってない」
『誰かにCordName言われたら、それに従っちゃうよ?』
「その時はセバスチャンに止めてもらう、それかCordNameを変えるかだ」
『…うん』
「もう一度言う、ココにいろ」
『うん』
「…泣くなよ」
『うん…』
「さっきから"うん"ばっかりだな」
『…うん』
ズルズルと情けなく鼻を啜る***にハンカチを渡し、シエルは優しく***の頭を撫でた。
「……やれやれ、紅茶が淹れ直しになってしまった」
扉の奥から聞こえる啜り泣きの声にセバスチャンは困ったように笑う。
ワゴンに乗せられた紅茶は随分前に冷め切ってしまった。
「また後にしましょうか」
扉をチラリと見やりセバスチャンはワゴンを押しながらその場を後にした。
少年の本音 END
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