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―何もこんなタイミングじゃなくても良いのに。
背中を押され、よろめきながら***は思う。
言葉が無くした記憶を呼び覚まし、同時に***自身が何者かを思い出させる。
そして頭の中身もゆっくりと、しかし的確に、その構成を変える。
感情も感覚も、***の思考さえも消えて行く。
―もう一緒に…いれないな
また一人かなぁ、と機能を停止し始めた頭で考え、***は意識を手放した。
「殺人猫、ですか」
趣味が悪いですね、とセバスチャンが吐き捨てる。
今、目の前に立つ***はセバスチャンが知っている***では無い。
黄色の瞳に感情は無く、ただ冷たい笑みを浮かべている。
「行け」
その言葉を合図に***は表情を消し、思い切り床を蹴った。
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