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『…ココ2階かぁ』
窓から外の様子を伺い、ペタンとシエルの横に***は腰を下ろす。
つい先ほど、アズーロは部下と犬を引き連れて部屋から出て行ってしまい、今ここにいるのは***とシエルだけ。
シエルのアズーロに蹴られた傷を労りながらポツリと***が呟く。
『お迎え、くるかなぁ』
「来るだろう、今この部屋に誰もいないのが証拠だ」
『あ、そうだね。外も五月蠅いし』
耳を澄ませばバタバタと人が走り回る音や、罵声に近い命令の声が飛び交っているのが聞こえる。
その中で1つだけこっちに向かって来る足音。***は自然とシエルを守るように立ち上がった。
「くそっ!」
荒々しくドアを開けて部屋に戻って来たアズーロは真っ直ぐに***達の元へやって来る。
そして片手に銃を構え、ニヤッと言う音が似合いそうな笑みで***に尋ねる。
「お前、なんで…そこのクソ餓鬼と一緒にいるんだ?
お前はそっちじゃない、こっち側だろう?」
『え?』
戸惑う***を余所にアズーロは一人話続ける。
少し騒ぎの音が近くなったように感じた。
「わからねぇって面してやがるな。
やっぱ2か月前のアレで記憶を飛ばしやがったって噂はマジか」
―2か月前
その言葉に***とシエルが反応する。
「黒髪金目のガキ。それから…」
『やっ!!』
「***!」
チャラッと金属のぶつかる音と共に、***はアズーロに捕まった。
「このプレート。No.31、間違いねぇ当たりだ」
『っは、離してっ!』
「うるせぇよ」
勝ち誇った声と共にチャキッと***の頭に銃口が当たる。
「残念だったな、リトル。
このガキはお前といるべきじゃねーんだよ
さぁ、お前の所の番犬が来るまで待とうじゃねぇか」
カチリと時計の針が動く。
また少し騒ぎの音が近くなったような気がした。
誘拐 END
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