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「いらっしゃいませ」
店のカウンターで愛想のいい店員が***に笑顔を向ける。
「何か欲しいものがあるのかな?」
『え、あ…』
勢いで店の中に入ってしまったはいいが、***は内心焦っていた。
今、笑顔を向けている店員は昔、ウィンドウに張り付いて商品を見ていた自分に罵声を浴びせたのだ。
―さっさとどっかへ行け!!
―お前なんかが店の前に居たら店の質が下がっちまう!
服装が全く違うから気が付いていないらしいが、もし気が付かれた事を考えると眩暈がしてきた。
とその時店員が視線を***の後ろへ移した。
「***、早すぎるぞ」
『シエル!』
助かったと言わんばかりに***はシエルに走り寄る。
それとすれ違いにセバスチャンが店員まで歩いていった。
「昨夜連絡を頂いたのですが」
そう言いながら荷物を抱えながら、器用に燕尾服の内ポケットから紙を取り出し、店員に差し出す。
店員は少々お待ちください、とカウンター奥に姿を消した。
「お待たせしました、ご注文の品はこちらですね?」
少しして大きな箱を抱え店員が戻り、丁寧に箱を開けながら中身の確認を求める。
「坊ちゃん、お間違いないですか?」
「あぁ大丈夫だ。後は出来たら綺麗に包んでもらいたいんだ。人にやるんでね」
店員は1つ返事で箱を薄いピンクの可愛らしい包装紙とリボンで包んでくれた。
チラリとシエルは***を見る。
***は店に置かれているおもちゃを眺めるのに必死になっていた。
「どうぞ、お待たせしました」
「すまない。***、帰るぞ」
『うん!』
「またのご来店お待ちしております。そっちのお嬢ちゃんもね」
『あ…はい」
店に来たときと変わらない笑顔を向けられ、***も小さく答えて店を出た。
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