no title | ナノ


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『へぇ、ニホンって面白い国なんだねぇ』

今***が読んでいるのは【小さな国から大きな国まで!世界の国々】と書かれた本。

「いつも思ってるんだが……***、その本はこの部屋にあったのか?」
『あったよ?その辺の下の辺りにー』

***が指差された方向にシエルが視線をずらした時、部屋がノックされる。
入って来たのは数分前にこの部屋を出ていったセバスチャンだった。

「どうした?パフェでも持って来たのか?」
「いえ。坊ちゃんこの部屋に"ニホン"に関する本はありませんか?」

手ぶらの彼に嫌味を込めたシエルだがアッサリと躱され、逆に質問で返される。

「"ニホン"?何を調べるんだ?」
「丼についてです」
「DON?」
「えぇ実は……」

彼が目を離した隙に庭は砂漠化、食器は木っ端微塵、食材は黒焦げになったと言う。
打開策を思案しているとタナカの湯飲みで日本食を思い付いたらしい。

『タイミング良いのかな、悪いのかな…』
「悪いんじゃないか?」
「全くです」

本当にあの人達は、と文句を言いながらセバスチャンは書斎の本を片っ端から読んでは捨てて行く。
その早さに***が驚いているとシエルがこっちを見ている事に気がつく。
その意図を理解した***はセバスチャンに声を掛けた。

「***様?何か?」
『えっと…丼とは古来日本から労働者を労うご馳走として用いられて
来た食べ物の事をさす
 丼の元祖は庶民が憧れた宮廷料理の「芳飯」だと考えられている
 ……これで良いですか?』

淡々と丼の説明をしてのけた***にセバスチャンは呆然とし、シエルはフッと笑う。

「***様、それをどちらで?」
『え?あ、【自称食通の私が教える日本の食べ物百科】ってタイトルの本で…場所は確かその辺の下辺りにー』

さっきシエルに教えようとした場所を再び指差す。
セバスチャンはすぐに本を探し出すと、一瞬で読破した。

「助かりました、***様ありがとうございます」
『そ、そんな大した事して無いですっ…』
「お礼は後程。では失礼します」

パタリと閉められたドアを眺めながらシエルが呟く。

「***、カンパーニュの意味とは?」
『えっと…田舎パンの事、因みにフランス語が語源
 小麦粉、もしくはライ麦と灰褐色の小麦を捏ねて作る。
 チーズを使った料理によく合う
 だったと思う』
「やっぱり…凄いな」

やはり淡々と説明してみせる***にただ感心する。

「それもさっきの本か?」
『ん?それは【自称パン通の私が教える世界のパン】って本』
「そんな本がこの部屋にあったのか…それと【自称○○の私】はシリーズなのか?」
『うん。全部で何冊かは分かんないけどね』

結構詳しいよ、と***が笑う。

「そうだ、ニホンと言えば」
『?』
「いい物をやるから、お前もクラウスが来たときに顔を見せろ」
『え?』


ちょうとセバスチャンに味○素入りレモネードを勧めた時のような笑みを見せるシエルに、思わず***はその場から逃げ出したくなった。



始動  END
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