落ちた先は蒼 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


(1/3)


「っ・・・ぅ、あ・・・」

早くも要は自分の発言に後悔していた。









『成実・・・俺の事、話そうと・・・思うんだ』

そう言った直後、口の端にご飯粒をつけた成実が箸を落とした。

「え、それって・・・要の事?」
「うん・・・」
「あの荷物とかの他に?えーっと、要がどこで産まれたとか?」
「そ、そうなるかな・・・?」

疑問系ではあるが、要が肯定を示せば、成実は慌てて部屋から飛び出していったのだ。
・・・勿論、口の端にご飯粒をつけたままで。
その後、遠くの方で

『梵!梵!大変だよ!!』
『shit!成実、俺は今、飯食ってんだよ!』
『てめぇ成実!まず口まわりを拭きやがれ!』
『ギャァァ!小十郎、箸向けないで!』

等など3人分の怒号だか、何だかが聞こえてきた。
既にこの時点で逃げ出したくなった要だが、必死に大人しく待つこと数分。
ボロボロになった成実を文字通り、引き摺りながら小十郎が部屋を訪ねてきたのだ。

「成実から話は聞いた。てめぇの事を話してくれるんだってな?」
「あ・・・はい」
「当然政宗様も同席するが良いな?」
「・・・っ」

意志の確認ではない、これは強制なのだ。
逃げたい、でもそんな事すれば情報を掴むチャンスを逃してしまう。
背に腹は変えられない、と要は無言で首を縦に振った。






そんなこんなで話は一番上に戻り要は、やたらと広い部屋に通されて、その中心に座っていた。ついでに肥料以外の荷物を詰めたリュックサックを隣に置いて。
傍に成実がいればもう少し落ち着けたかもしれないが、生憎彼は伊達の武将。小十郎と並ぶようにして、上座にいた。
そしてそのさらに1段上に、この地の領主であり、未だに要が警戒し続けている伊達政宗が鎮座していた。
(どうでもいいが小十郎だけが武装している。領主である政宗はともかく、同じ伊達の武将であるはずの成実が着流し姿なのは如何なるものか)


それにしても…気絶してしまえば、どれだけ楽だろうか。


何か言いたくても、口は緊張と威圧感でパクパクと情けない音しか出してくれない。
悔しくて着物をギリリと握り締める。

落ち着け、落ち着け、ここで喋らなければ何も変わらない。
それにこれからの人生、生きるか死ぬかがかかっているんだ!
とにかく何か喋れ、そうすれば風向きは変わる・・・。

必死に自分を宥め、何度も何度も深呼吸を繰り返す。
政宗を初めとする3人は、要が喋るまで沈黙を決めているらしく、誰も何も言わなかった。


「っ、は・・・今からっ・・・俺の、ことを話し、ます。信じる、信じない、は全部聞いてか、ら決めて・・・ください」


搾り出すような小さな声でそう告げた後、要はもう一度大きく息を吸い込んだ。



>>

目次へ