落ちた先は蒼 | ナノ
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政宗が要に真実を伝えた翌日。
毎朝の畑仕事に来なかったと小十郎が呟き。
朝餉を誘いに行ったけど断わられたと成実が口を尖らせる。
それを聞いた政宗が様子を見に行こうと腰を上げた瞬間、遠くから要の絶叫が響いた。

「どうした!?敵襲か!?」
「ぁ・・・まさ、む、ね・・・?」
「Hey・・・なんて格好してやがる?」

断りを入れることも忘れて開け放した襖の先。
寝床の上に突っ立っていた要の姿を見て、政宗の眉間に皺が寄せられた。
布団に包まっていたのかボサボサの頭に、着乱れている夜着からはみ出した戦を知らない肌、そして隠れて泣いていたらしい赤くなった目。
軍と言う男が多い所帯では、些か目に悪い光景だ。

「あ、のさ・・・。いや、その・・・うん・・・」
「何だ、はっきり言えよ」

ヘナヘナとその場に座り込んだ要にあわせるように、政宗も部屋に入り腰を下ろす。
しばらくの間、あーだのうーだの唸っていた要は色々視界を彷徨わせながら、ボツボツを喋り始めた。

「昨日の事、考えててさ・・・。多分、俺が・・・農神?とか言うのには覆しようが無い事実なのは・・・もう仕方がないとして。冷静になれば、俺らの後見人に親戚の人がなってくれてるから、悔しいけど稔は1人じゃないわけだし・・・。それを思ったら、政宗を掴んだりして悪いなぁ、なんて思ってさ。当然、片倉さんもその場に居たから・・・その、畑に行くの・・・気まずいなぁ、って思って。で、畑行くのやめたら朝飯で顔合わすのも・・・な?」
「Ah・・・確かに、な」

な?とはにかむ様に笑われて、政宗は短く同意をする。
内心では案外現実を素直に受け止めている要に感心を覚えながら。

「そしたら結局、部屋から出るタイミングなくしちゃってさ・・・。で、いつきの村の事思い出したら、その・・・俺、とんでもない約束、しちゃってたの・・・思い出してさ」
「promise?」
「そ。いや、俺も早く話を終わらせたかったから、何気なしだったんだけど・・・。ど、どうしよう・・・!」
「Stop!落ち着け、つーかその内容を話せ」
「・・・俺が、もしも農民の味方をする神様なら、これからいつきの所が不作にならないよう頑張ってやる・・・って約束、した」

視線を逸らし、ボソリと呟いた要の言葉に政宗は思わず目を見開いた。
とは言え勝手な約束をした要を責める事も出来ない。
なんせ彼だってその頃は、まさか自分がそんな大仰なものだとは思っていないのだから。

(・・・だからって、なんつー約束をしやがったんだ・・・!)

行き場の無い怒りが政宗の胸の中でグルグルと彷徨っていく。

「農神って言われて、力とか・・・わかってんのか?」
「・・・全然」

怒りを抑えて、問えば首を横に振られてしまう。
当たり前といえば、当たり前なのだが、・・・どうしたものだろうか。
とにかく必死に冷静さを取り戻し、その頭で政宗は1つの結論を導いた。

「・・・春になれば、甲斐に行くぞ。アイツに会いに行く」
「アイツ?誰?武田の武将?」
「いや・・・俺に情報をくれた奴だ。俺としては2度と面を会わしたくないんだがな・・・」

政宗の脳裏に色々な意味で年齢不詳の少女の姿が浮かび上がる。
恐らく後にも先にも、この奥州筆頭と呼ばれる男に右ストレートをかますのは彼女だけに違いない。
しかし今、頼れるのは彼女しか居ないのも事実だった。

「あ、会いたくないなら・・・俺だけで行くよ?」
「No!1人で馬に乗れねぇ奴が旅に出たら、道がわからない上に時間がどれだけあっても足りねぇよ。それに雪が積もったら身動きとれないしな、雪が積もるまでに手取り足取り乗馬を教えてやるよ」
「ひぃ、やっ・・・乗馬は、その・・・!」
「心配するな、教えるのは小十郎か成実だ。・・・ま、小十郎はスパルタだけどな」

ニヤリと政宗が笑えば、判りやすいほどに要は顔を青ざめた。
・・・よほど乗馬が苦手らしい。
先が思いやられると政宗は苦笑した。

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