落ちた先は蒼 | ナノ
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夜明けと同時に、いつきの村を経つ。
・・・そこまでは良かった。

「要兄ちゃんもお侍さんも気をつけて帰るんだべー」
「Thanx」
「世話になったな」
「うん、ありがとー」

村の境まで見送りに来てくれたいつきにそれぞれ笑顔で別れを告げる。
そして両手に収穫された野菜を抱え、さてどうしたものかと要は考える。

馬は2頭、人間は3人、野菜両抱え分
3人のうち、手綱手放し乗馬ができるのは1人だけ。
だが、その1人に野菜を抱えてもらうわけには行かない。
ビジュアル的に問題だし、何より側近が許さないだろう。

「・・・どうすんの?」

なんとなく予測はついていたが、それを拒否したい意味を込めて要は前を歩く2人に問いかけた。










・・・ああ、聞かなきゃ良かった









心の中で流れる涙を誰が拭えるか。
振り落とされないよう必死に手綱を掴みながら、要は後悔していた。
むしろ後悔よりは、この距離感が耐えられそうになかった。

「Ha!要舌噛むんじゃねぇぞ!」
「・・おぅ゛っ?!」
「・・・遅かったか」

直ぐ真後ろ、背後から聞こえる声。
悲しいかな。要は政宗の馬に相乗りすることとなった。

理由は簡単。
小十郎の馬に野菜を積んだことで、要の乗る場所が無くなったから。
予想はしていたが、実際にそうなると泣きたくもなる。

おまけに小十郎と相乗りした時のように後ろにしがみ付こうとすれば、六爪に邪魔をされた。
それに要が前に来たからと言って、政宗が要にしがみ付くはずもない。
(というか要自身、それはこちらから願い下げをしたい)

自分の命を支えるのは、手綱だけ。
そう考えれば、自然と握る手にも力が入る。

よく「乗り手が不安になれば、馬も不安になる」と聞くがあれは時と場合によるらしい。
現に要がガチガチになって手綱を握っていても、馬は走る速度を落とそうとしない。

(落ち着け、これはジェットコースターだ・・・
プログラム制御されてなくって、いつコースアウトするか判らない。
セーフティーバーの変わりが手綱、レールの変わりが山道!
そんな危険要素がたっぷりなだけなんだ・・・!)

妹が居れば確実に「お兄ちゃん大丈夫?」と心配されそうな考えがグルグルと回る。
それぐらい要はパニックに陥っていたが、生憎誰も気付かない。

「急いでるからな、Speed upするぜ!Ya-ha-!」
「?!」

政宗が馬の腹を蹴ったらしく、スピードが上がる。

「政宗様?!要の事も考え、少しご自重なされ!」

後ろに引っ張られた要の耳に小十郎の言葉が届くが、政宗の耳には届いていなさそうだった。
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