落ちた先は蒼 | ナノ
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「Hey,要。いつきンとこに行くぞ」
「寒いからな、防寒はしっかりしておけよ」

約1週間城を留守にしていた奥州双竜は戻ってくるなり、要にそう告げた。
部屋で明日の畑作業の事を考えていた要は、ポカンと口を開けたままそれを聞き入れた。

「あ、うん。唐突、だけど・・・どうかした?」
「Ah・・・まぁ少しな」

チラリと政宗が小十郎に救いを求める。
視線の意図を読み取った小十郎は庭を指差した。

「冬が近いだろ?ココは冬になれば雪で動けねぇからな」
「そう、ですね。・・・でも・・・」
「何か不満か?」

嬉しそうな反応を示すと踏んでいたが、意外にも渋る要に小十郎の眉間に皺が寄る。

「え、と・・・畑、まだ見てもらってないじゃないですか」
「そうだな」
「それから成実が・・・執務の代理で死んでるんですよ。少しぐらい、休ませてあげないと・・・」
「Ha!それぐらい何時もの事だろう?」
「それ溜め込んだ人が言う言葉?・・・ぁ」

何気なく言った言葉だが、要は思わず引きつる。
こっちを見る政宗の顔から表情が消えた。
そして小十郎の目つきが少しきつくなった。

やばい、今のは失言だ。

そう思って口を開こうとする前に、要の肩に小十郎が手を置いた。

「・・・よく言った」
「ぇ?」
「小十郎?!」
「政宗様。要の言うことは正論です。最北端に行くのも重要ですが、やはり成実たちでは処理しきれない書類を先に片して頂かないと」
「なっ・・・。小十郎どっちの味方だ!」
「この小十郎。常に政宗様の味方でございます。しかしながら政宗様には国主としての責務を果たしていただかなくては」

ガシッ、と政宗の首根っこを掴むと小十郎は要の部屋を出る。
何処かデジャヴを感じる光景だが、違うのは二人とも戦装束だと言うところだろうか。
小十郎に不満を叫ぶ政宗の声が小さくなってから、要はほぅ、と息を吐き出した。

「・・・なんだったんだろう」

冷静に状況を整理してみる。
とりあえず政宗の言い出したことに、小十郎が珍しく止めに入らなかった。
最終的には執務をさせるために連れ出したが、いつきの所に行く事へは小十郎も認めているのは間違いないだろう。

「行きたい、なんて零したっけ?」

首を捻るが、答えはNoだ。
常々、帰りたいとはボヤいてはいたが、人のいる所で言った記憶は無い。
そしていつきが手紙を出したから、と言うのも考えにくいだろう。
いつきは政宗と知り合いのようだが、国主が1人の手紙で動くとは思えない。
そもそも彼女はあまり文字を知らない、と言うのが要の記憶だ。
なので手紙、と言う可能性も消える。

「・・・?」

思いつく可能性がなくなり、再び要は首を捻るが、答えなんか出てくるはずもなかった。



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