落ちた先は蒼 | ナノ
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「…空が高くなってきたなぁ」
「秋だもんね」

天気が良いからと、部屋を出て縁側で空を眺めていた要。
たまたま零した呟きを、同じくたまたま通りかかった成実が拾い上げた。

「珍しいね、畑以外で要が1人で部屋の外に居るなんて」
「んー。戸開けてたら風が吹いてきてさ。閉めようと思って来たんだけど、なんかそのまま」
「そっか」

天気良いもんな、と笑いながら成実は要の横に腰を下ろす。
手ぶらな辺り、本当にたまたまこっちに来たようだった。

「奥州の秋は短いよ、夏もだけどね。その後の冬は滅茶苦茶長い」
「そうなんだ」
「うん、おまけに滅茶苦茶雪が降るからね。こっちから攻め込めないけど、冬の奥州に攻め込む馬鹿もいないよ」
「自然の要塞みたいだな」
「上手い事言うね。実際その通りだよ」

どうやら地球温暖化とは無縁なこの時代、冬の寒さが厳しいのは当たり前。
おまけに奥州は今で言う東北地方。甘く見ないほうがよさそうだ。

「畑、冬越えの支度しないと」
「あぁそれは小十郎に聞いた方がいいね」
「そうするつもり。多分、俺の知識じゃ無理。・・・あ、誰か来てる」

不意に感じた人の気配に要はその方向を見る。
つい最近判ったが、どうやら気配を知るのが上手いらしい。
その事を皆に伝えれば、「そりゃ、アレだけ警戒していればな」と同じ反応を示された。
強ち間違ってはいないので、否定はしなかったが何だか切ない。

「要!…と成実」
「え、何、俺おまけ?!」
「政、宗・・・?その格好」

初めて会った時の戦装束で現れた政宗に、要はほんの少し緊張の色を強めた。
そんな要に気付いた政宗は「あぁ」と短く声を上げた。

「野暮用でな、少し城を出る。何かあったら成実を頼れ」
「野暮用って戦?」
「No,戦じゃねぇから安心しな」
「そっか。あ、片倉さんも一緒に?」
「Ah・・・小十郎は来ねぇよ」
「ふぅん・・・いってらっしゃい。気をつけて」
「thank you」

珍しいこともあるもんだ。と要が思っているうちに、政宗は成実と二言三言交わすと来た道を戻っていった。
どさくさに紛れて、要の頭をしっかりと撫でながら。
なんと言うか、慌しい。そんな印象を受けた。


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