落ちた先は蒼 | ナノ
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佐伯 要は、不思議な男である。
伊達成実はそう思っている。

戦国の世に生きるものにしては、あまりに華奢な身体。
本人は20歳だと言い張るが、線が細いということも重なりそうは見えない。
そして武具を握った経験など、まるで皆無だと物語る綺麗な手。
極めつけははじめて見た時の姿とその荷物。
この国とも、南蛮ともつかぬ服装。
本人が「りゅっくさっく」とか言った、見知らぬ厚手の素材で作られた荷物入れ。

本来なら不審者として斬り捨てられてもおかしくない彼だが、見つかった相手が不味かった。
この地を治める領主は口笛一つ吹き、止める側近の言葉も耳にせず、彼を自身の住まう城へと連れ帰ってしまったのだ。

城に連れて来られた彼の警戒っぷりは、拾ってきた手負いの野生動物そのもので。
それでも紆余曲折しながらも、日々接触を試みた結果、成実はなんとか警戒されず傍にいることが許される所まで入った。

「梵も馬鹿だよなー」

湯の入った薬缶と湯飲みを持ち、縁側を歩く成実は庭の植え込みにそう声をかけた。
直後、ガサガサと植え込みが揺れ、成実に良く似た・・・但し右目に眼帯をした男が姿を見せた。

「・・・うるせぇよ、成実」
「執務放り出したのって要に会いに行こうとしたんでしょ。でも残念。小十郎にも大分警戒してたよ」

梵なんて姿見せた瞬間に叫ばれちゃうんじゃないの?
僅かに意地の悪い笑みを見せ、成実はさっさとその場から立ちさる。

「Shit!奥州筆頭が聞いて呆れるぜ・・・」

苛立たしげに言葉を吐き捨てると、男もその場を去ろうとしたが、背後からの声に思わずその足が止まった。

「こちらにいらっしゃいましたか、政宗様」
「・・・小十郎」
「今日は執務を片付ける。そう仰っていたのは、小十郎の聞き間違いだったのでしょうか?」
「STOP!小十郎、待て!」

ピリピリと身体から雷を発する小十郎に思わず一歩後ずさる。
逃げてしまえば一番いいのだが、それは最悪の結果を引き起こす。と彼の本能が訴えてきた。

それから数秒後。
激しい落雷音と共に、奥州筆頭・・・伊達政宗の悲鳴が城内に響き渡った。


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