落ちた先は蒼 | ナノ
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(2/2)

あれから四半刻もせぬ間に庭に雷が落ちた。
雷を落とした主は誰が見ても判るほどに怒気を纏わせ、ただ一言。


「てめぇら前出ろ」


そう告げた。


「…で?」
「本当ごめんなさい。反省してます、だからお願い、極殺だけは…!!」
「…、…」
「要!黙ってないで何か言ってよ!」
「…、ずぶ濡れで…寒いです…」
「確かに寒いけど、今欲しいのはその言葉じゃない!」


縁側に並んで正座をさせられた2人を見下ろしているのは、言わずもがな小十郎。
雪が解けて服に染み込み、冷えてきたからカタカタと震える要に対し、そこまで濡れていないからか馴れているからかは不明だが成実は黙ることなく、現状をなんとかしようと必死だった。
対照的な2人を一瞥すると、小十郎は眉間を抑えて何かを吐き出すように長い息を吐いた。


「ったく、女中が血相変えて成実と要の喧嘩声が聞こえるって走ってきやがるから、何事かと思えば…雪合戦だぁ?」
「はい、ほんっとーに申し訳ありませんでした」
「大体成実、てめぇ武人だろうが。一般人の要と張るたぁ何考えてやがる。まさか童心に返ったとか言うんじゃねぇよなぁ?」
「…。…や、その…それは…」


そのまさかです。とは流石に言えなかった。
初めこそ自分と要の力量差は判っていたつもりだから、手は抜いていた。
それが何時しか勝負事の血が騒いで本気になったのは紛れもない事実。
その証拠が一方的な攻撃を浴びて、横でずぶ濡れになって震えている要だった。
何とか別の言い訳を探そうとする成実だが、さすが小十郎、すべてお見通しだった。


「てめぇの考えるこたぁ、判ってんだ。大方言い訳でも考えてんだろ?」
「…仰る、とおりです…」


完敗。その一言に尽きる。
打つ術無しと、成実は早々に床にひれ伏した。
そんな時、真横で震えていた要が口を開いた。


「…悪いの、俺です」
「要?」
「あ゛?」


2人の視線が要に集中する。
視線を一気に浴びた要はビクリと体を震わせながらも、寒さで色を失った唇を必死に動かした。


「俺が、最初に投げて、成実にあたって…。成実はそれに反撃して…、そこで終わればお互い様、なのに、俺が、また投げたから…。だから、悪いのは、俺です。…ごめんなさい…」


言い終わり口を閉ざした要は寒さに震えながら審判を待つ。
最初に聞こえたのは溜息だった。
その音にぎこちなく顔を上げれば、小十郎は呆れたような視線を向けていた。


「今、湯を用意させている。用意が出来たらすぐに呼んでやる。だから先にその濡れた奴を脱いで着替えろ」
「え、あ…」
「早くしねぇと風邪ひくぞ」
「あ、はい。…成実は?」
「こいつはこれ位じゃどうにもならねぇよ」


早く部屋に入れ、と合図され要は震えながら自室に戻る。
とりあえず冷えて使い物にならない手を暖めようと火鉢を囲む。


「…寒い…」


何とか着替えたものの、着替えたからと言って緩和される寒さではない。
暫くして女中が呼びに来るまでの間、文字通り火鉢を抱え込んで要は暖を求め続けた。






























=====その後の小十郎と成実=====



「…何なの。俺には厳しいのに要にはすっげー優しいとか」
「当り前だろうが。あんな震えた状態で謝ってるのを無視して怒るほど鬼じゃねぇ」
「ふーん…。じゃぁ俺もこれから寒さに震えて謝れば許してもらえるかな?」
「あぁん?」
「…嘘です。だから極殺やめてってば」
「大体考えてみろ。あのまま説教して、結局要が風邪をひいたらどうなる」
「えーっと、十中八九、梵が見舞いだ何だで部屋に来るね」
「そうなれば唯でさえ進んでない執務が余計に滞るだろうが」
「あー…なるほど…」











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ちょっと閑話的な感じ。
モブなのに一番心開かれている成実が一番おいしいポジションな気がしてならない。
そして久しぶりすぎて、口調が少々あやふや感が否めない…。

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