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「俺が、最初に自己紹介したの覚えてる?」
「あぁ」
「そのとき割愛させてくれ、っていった時代があったろ?」
「あったな」
「覚えてるんだ。その時なんだよ、俺が・・・人が怖いと感じるようになったのは」
もう毎日が地獄だったよ。
ふっと要は笑うが、その笑みには曇りが有った。
「でも俺がどれだけ傷ついて、ボロボロになっても、妹には稔には何も知らないでいて欲しかった」
「・・・その言い方。outだったのか?」
「さぁ?俺は稔じゃないから判らない。でも、薄々俺がおかしいとは感付いてたんだろうな」
妹に心配させるなんて悪い兄ちゃんだ、と要は自嘲気味な笑みを浮かべる。
「・・・」
「だから稔は叔父に相談した。そして叔父が動いたお陰で、俺は地獄から助け出された。でも、助け出されてもその間の経験と恐怖は消えない。消えない傷として今も俺の中に残っている」
「・・・それが、人を怖がる原因か?」
「そういうこと」
あぁ、でも。と要は付け加える。
「ここに来て、成実が最初懲りもせず俺の相手してくれて、小十郎さんや政宗が俺に接してくれる。だから、最近は少しマシなんだよ。そりゃ・・・誰かさんみたいにいきなり来られたら無理だけどさ」
「Sorry.あん時は未知の話ばっかりで興味があったんだ」
最後に付け加えられた小さな嫌味に、政宗は乱暴に頭を掻いた。
「・・・とりあえず、コレぐらいで勘弁な。もっと深い所は、俺も話すのに勇気がいるから」
「Ok.むしろよく話してくれた。Thanks」
腕を伸ばし、要の頭をワシワシを撫でる。
一瞬目を見開いた要だったが、すぐに柔らかい笑みを浮かべた。
「・・・皆好きだよね、俺の頭撫でるの」
「Ah...なんか丁度良いんだよな、撫でたくなる」
「俺、犬猫じゃないんだけどな・・・」
「そんなこたぁ、判ってるぜ」
「・・・嫌じゃないからいいけど。じゃぁ、俺そろそろ寝るよ」
片付けどうしたら良い?と尋ねる要に政宗はそのままで良いと告げる。
「そう。じゃぁお休み政宗」
「あぁ、Good night」
トンッと要の部屋の障子が閉まるのを見届けて、政宗も立ち上がりその場を後にした。
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ゆっくりと薄くなる警戒心の壁
でも不意打ちはまだ厳禁
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