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「・・・・・・すっげぇ」
何が?盛り上がり具合が。
酒が入ると人間タカが外れるのはよく聞く話だが、それは時代が変わっても同じらしい。
至るところでメンチが切られ、それを煽る観衆。
かと思えば別の場所では、互いの苦労話をして労わりあう人々。
統一感もへったくれも無い盛り上がりに、要はしばらく呆然としていた。
「Hey.場所変えるぞ」
「え?」
政宗にグイッと腕を引かれ、要は半ば無理矢理立ち上がる。
戸惑う要を気にする事無く、政宗は小十郎に何かを告げると要を引っ張ったまま広間を後にした。
そしてよく判らないまま着いて行けば、たどり着いたのは要の部屋の前だった。
「政宗?」
「飲みなおしだ。OK?」
「お、おう・・・」
既に用意されていた酒をはさみ2人は腰を下ろし、ぼんやりと月を眺めた。
「って、抜け出して良いわけ?」
「良いんだよ。城主(オレ)がいれば、あいつ等だって思い切り飲めねぇだろ」
「・・・アレで・・・?」
―あれだって十分じゃないか。
そう思っても要は口に出さない。
代わりに徳利を手にして、お猪口を政宗に突き出した。
「ほら、飲みなおすんだろ?お酌してやるよ」
「Thanks.わりぃな」
「・・・なぁ」
2,3度お酌をした後、不意に政宗が呟いた。
「過去に何があった?」
「え?」
「最初につれてきたときの警戒振りも半端じゃなかったが、その後も何かの拍子に要・・・アンタは人を怖がってるだろ?」
「そ、れ・・・は」
政宗の言葉に要は動揺を隠し切れない。
「それに、だ。やけに稔、だったか?sisterに拘ってないか?誰が護るだの、手ぇ出すなだの」
「ちょ、・・・待てよ。稔に手出すなって、どう、いう・・・」
「Ah・・・覚えてねぇんだったな。panic起こしたときに、口走ってたんだ」
「・・・・・・」
「なぁ、何があった?」
コレは本来無遠慮に聞いてはいけないことだ、と俯いた要を見つめながら政宗は思う。
下手をすれば要は再び他人を警戒して、政宗と距離を取るかもしれない。
けれど要を正式に客人として迎えた以上、政宗には要を知る権利が有った。
「・・・不躾だよ。政宗」
「Sorry」
俯いていた要がゆっくりと顔を上げる。
その表情は少なくとも、怒っているようには見えない。
強いて言うなら・・・困惑、だろうか?
「例えるなら・・・。俺がいきなり政宗に眼帯外してって言うぐらい、かな」
「っ!」
「でも、あれだろ?俺、政宗の拾い物じゃなくて、伊達家の客人になったから。招いた本人は知っておかなきゃと駄目なんだろ?」
「・・・yes」
お猪口を置き、要に向き直った政宗は首をゆっくりと縦に振った。
「なら仕方ない。政宗は皆をまとめる立場にあるんだから」
「じゃぁ・・・!」
「でも全部は言えない。俺だって準備が出来てない。だから、少しだけ」
ほんの少しだけな。
そう念押しをして、要は手にしていた徳利を脇に置いた。
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