落ちた先は蒼 | ナノ
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「・・・うま、だ」
「うん、馬だねー」
「あぁ、馬だな」
「馬以外に何か見えんのか?」

現在位置、厩。
乗馬の訓練は本気だったらしく遅い朝餉を取った要は休憩もそこそこ、呼びに来た成実に連れられて厩の中にいた。
どうやら要にあった訓練用の馬を選ぶ手筈になっているらしく、既に政宗と小十郎も待機済みだった。

「ね、梵。やっぱ要になら大人しい方が良くない?」
「Ah・・・そうだな。振り下ろされて怪我でもされたらなぁ」
「俺としては、こっちかアイツだと思うんだけどさ」
「いや、あっちかコイツじゃねぇか?」
「え、でもソイツはさー」

アレでもない、コレでもないと政宗と成実は2人でどんどん厩の奥へと歩いていく。
恐らく小十郎と要がついてきていない事に気付いていないのだろう。
振り向く仕草さえ2人は見せない。

「・・・行っちゃった」
「そうだな」
「あ、片倉さん。・・・今朝は申し訳なかったです」

ペコリ、と要は頭を下げる。
自分の都合で畑作業を1日とは言え、放棄した。
怒られるのは当然だ、と身構えていたのに。

「頭を上げろ」
「え?」

言われて素直に頭を上げれば、小十郎の視線とかち合った。
その先の目に怒りの色は見えない。

「誰だって、いきなりあんな事言われたら動揺するだろ。不可抗力だ、だから謝るな」

それに俺だって、戦に言ってる間は畑の面倒なんか見れないしな。
そう付け加え苦笑をもらしながら、小十郎は要の頭をクシャクシャと撫でる。
要は思わぬ展開に、ただ呆気に取られるだけだ。

「あぁ、後、俺の事は小十郎でいい」
「はい、え?」
「政宗様が呼び捨てなのに、俺が畏まられていちゃ政宗様の立場がねぇだろ」
「でも、片倉さん・・・俺より年上なのに、呼び捨てなんて」
「俺からすれば、呼び捨ての政宗様を差し置いて敬称つけられているなんて、だ」
「ぬぅ・・・」

小十郎の言い分が尤もなのは判る、ここは現代以上に身分社会だ。
しかし要だって年上を呼び捨てにするほど礼儀知らずではない。
頭に小十郎の手を乗せたまま、要は唸り1つ妥協策を提示した。

「小十郎さん、はダメですか?」
「・・・」
「俺としては、コレが精一杯なんですが・・・」
「・・・仕方ねぇな」

小十郎が諦めたような溜息が1つ。つまり小十郎が折れたのだ。
妥協策が受け入れられたことに、自然と要の顔にも笑みが浮かんでくる。

「じゃぁ、改めてよろしくお願いします、小十郎さん」
「あ、あぁ。よろしくな、要」

いきなり畏まられたことに小十郎が驚いた表情を見せたが、すぐに口元に笑みを浮かべ、また要の頭を撫でた。

「・・・成実といい、政宗といい、小十郎さんといい・・・そんなに俺の頭は撫でやすいんですか?」
「なんとなく、な?それともなんだ、要の頭を撫でるのには理由が要るのか?」
「いえ、ないですけど・・・」
「じゃぁ良いじゃねぇか。行くぞ、政宗様をお待たせしている」

なんとなく、と言う理由で素直に納得されるかと言えば、答えは否だ。
だけどそれ以上の明確な理由を小十郎は持ち合わせていない。
そしてその小十郎が歩き出したため、要も慌ててその後を追いかけた。

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