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「やっぱleaderは違うな」
「一瞬で決まりましたな」
結局「おめぇらはおらが料理作ってる間、兄ちゃんと一緒にいたんじゃねぇのか?!」と言ういつきの一声により、要の寝床はいつきの家に決定した。
流石、一揆衆を纏めるだけあり、彼女の声は鶴の一声。
子ども達は渋々であったが諦めてそれぞれの家に戻り、要もいつきと共に彼女の家に移っていった。
「小十郎、あの話だが・・・お前はどう思う?」
「まこと信じがたいとは思っておりましたが・・・今は・・・」
「信じざるを得ない、か?」
暗い中、ぼんやりと行燈を見つめていた政宗は、不意にその左目を細める。
確認するような政宗の声に小十郎は黙って首を縦に振る。
「・・・北のお二人さん。いい事教えてあげる。
手元に置いて、大切にしてる子。
最初に拾ったっていう農村に連れて行きなさい。
・・・もしもそこが大豊作なら・・・大当たりよ」
甲斐に行ったときに土地神だと名乗る少女から貰った言葉。
あまり神やら仏やらを信じる身ではないが、要の正体が判明するかもしれないと言う望みを持ったのも事実。
だから此処、最北端まで要をつれてきたのだが、結果としてその話が本当だと裏付ける事になってしまった。
「要本人には告げるおつもりで?」
「yes、要にも知る権利がある。それで狙われるようになったら、俺が護る。それがつれてきたresponsibilityってやつだろ?」
ニヤリを口角を上げた政宗に、小十郎は胃が痛んだような気がしてそっと胸を押さえた。
「・・・今日はもうお休み下さい。明日には此処を立つのですから」
「Ok,要にも話す必要があるしな」
ふっ、と火を吹き消す音がして、部屋は闇に包まれた。
一方同じころ・・・
「兄ちゃんはもしかしたら、おらたち農民の味方してくれる神様かもしれねぇべ」
いつもの三つ編みを解き、キラキラと目を輝かせたいつきが要の前に身を乗り出す。
そのいつきから要は苦笑を浮かべながら、視線を逸らした。
「それは無いと思うんだけど・・・。俺、一般人だし」
「じゃぁ兄ちゃんが村さ来てくれた後、どうして作物がどんどん育ったのか、説明出来るだか?」
「偶然だろ?俺は皆の真似して、同じようなことをした。それだけよ、本当に」
バリバリと頭を掻きながら、今日何度も思ったことを素直に口にする。
「兄ちゃんがおら達の手伝いをしてくれたのは知ってる。だども・・・!」
それでもいつきは要が何か神聖なものだと信じてやまないらしい。
何とか説得しようと、要に必死に食いついてくる。
「あー、もう判った、判ったから。もしも俺がその神様とかだったら、いつきのトコが不作にならないように頑張るから」
「本当だか?!兄ちゃん今の言葉絶対だべ!?」
「本当、本当。だからほら、もう寝よう?明日も収穫あるんだろ?」
パァァアァと効果音でも付きそうな位明るくなったいつきに苦笑しながら、要は布団に押し込み自身もそれに続く。
客人用の布団なんてないから、いつきの布団に2人で潜り込み、上から要の防寒具を被せている状態だ。
「・・・おらにも兄ちゃんがいれば、こんな感じけろ?」
「かもね。・・・俺には妹がいるけど、どーしてるかなぁ・・・」
「兄ちゃんには妹がいるだか?」
「うん、そう。稔って言ってさ・・・」
闇に慣れてきた目で天井を眺めながら、要はポツポツと妹の事をいつきに話しはじめ、久しぶりに訪れた農村での夜は過ぎていった。
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