落ちた先は蒼 | ナノ


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「あれ?」

自室の襖を開き、思わず要は首を傾げる。
視線の先には寝ていると思った成実が布団の上で胡坐をかいていた。

「あぁ、おはよ」
「てっきりまだ寝てるかと思ったよ」

要の言葉に成実は苦笑いで首を横に振る。

「夢の中で梵と小十郎が言い争い始めてさ。寝れなくなった」
「うわ、それは嫌だな・・・」
「だろー?」

寝足りないのか欠伸をする成実に、要は寝ないのか?と問うが、やんわりと断わられた。

「ここん所、部屋に押し込められてかたらさ、身体動かしに行きたいんだよ」
「あ、そっか。じゃぁ行ってらっしゃい」
「ん。布団ありがとうな」

じゃ、と片手を挙げ成実は要の横をすり抜け、部屋を出て行った。
・・・因みに天井にいる気配は動かない。

「さ、て・・・」

入れ替わるように部屋に入り、布団の上に座り込んだ要はおもむろに後頭部に触れる。
軽く触れた先には、身に覚えの無いこぶが出来ていた。

「頭打った記憶ないんだけどな」

と言うより、政宗と押入れに潜り込んだ途中から記憶がない。
気がついたら既に押入れの外にいて、小十郎が心配そうにこちらを見ていたのだ。

「俺、何かしたのかな・・・」

とりあえず後から何かあったら困る、とこぶを擦りながら要は考え込む。
しかし覚えていない以上、考えても答えは出てきそうになかった。




















「・・・ありゃ何だったんだ?」
「さて・・・。何かに怯えていたのは間違いないでしょうが」

所かわって、執務室。
不在だった間の分をこなそうと、手を休む暇を惜しんで双竜は言葉を交わす。

「あぁ、それから確か"稔には手を出さないで"と」
「稔?聞いた事ねぇな」
「ここでの要の人間関係は限定されている事を考えると、恐らく・・・」
「Hm・・・。sisterか?アイツ確か、5つ離れたのがいるって言ってたな」

墨が切れ、掠れた筆を政宗がクルリと回す。
1度だけ小十郎はそれを嗜めるが、時間が惜しいためそれ以上の小言はない。

「まぁいい。いつきンとこまでは長いんだ。その間に聞けば良いだろ」
「そう致しましょう。時に政宗様?要には、いつきの元にいく説明は・・・」
「Explanation?あぁ、安心しろ。一度迫られたがな、panic騒動でそれどころじゃなくなって何も話してねぇよ」

何も話してない、と言う政宗の言葉に小十郎はホッと溜息をついた。
同時に甲斐で主君を殴り飛ばした少女の姿が脳裏に浮かんだ。

「あの土地神やらとの言葉を信じるのも抵抗がありますが・・・」
「要が何かを知るHintだと思えば良い。それだけだろ?」

クルリと再び筆を回し、そのまま穂先を小十郎に向けた政宗はニヤリと笑った。






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伏線張るの苦手。
上手に出来る人が本当に羨ましいです。
と言うか成実がほぼ毎回出ている件について(←
なんだか要さんの相棒になるんじゃないだろうか・・・って勢い。

まぁ次は最北端へ。
・・・たどり着くはず、だけどな・・・。

*It is impossible.
⇒そいつは無理だ

*Is it that I did what?
⇒俺が何をしたって言うんだ?(大分意訳)
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