落ちた先は蒼 | ナノ
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(3/5)

「あれ?」

視界の隅に蒼が過ぎり、要は思わず立ち止まる。
なんと言うかあの蒼は今、要が訪ねようとしている人の色な気がする。
そう考えながら耳を澄ませば、遠くから小十郎の声がするので間違いはないのだろう。

「・・・逃げたんだ」

と言う事は、間違いなく今の小十郎は極殺モードに間違いない。
ならば大人しく、部屋に戻って成実の寝顔でも眺めていよう。
頭の中で勝手に結論付けて、要は回れ右で来た道を戻ろうとする。
しかし突如横から伸びてきた手に腕を掴まれ、それは叶わぬことになってしまった。


「静かにしてろ」
「っ」

叫ぶ前に耳元で低い声で囁かれ、要は咽喉まで出かかった叫び声を必死に押し込んだ。

「Shit.小十郎のやつ、もう気付きやがったか」

真横から聞こえる声に、要は誰かがわかったという安堵と何をされるかわからないという緊張を覚え、離してくれと口元を押さえてくる手を叩いた。

「sorry.いきなりで悪かったな」
「悪いついでに・・・そっちの手も離して欲しい・・・」

小声で詫びる政宗につられ、要も小声で未だ政宗につかまれた腕を指差しながら、小声で訴える。

「It is impossible.出来ねぇな」
「な、んで」
「偶然見つけちまったんだ。怒られる時は一緒だぜ?」

ニヤリと笑う政宗に要は目の前が真っ暗になるのを感じた。
彼が誰かを巻き込むために逃げていたのか。
それとも逃げてる過程で偶然要を見つけたのかは判らない。
しかしどちらにしても、要からすれば巻き込まれたことに変わりはなかった。

「大人しく部屋にいればよかった・・・」

切実な要の呟きに、政宗は咽喉の奥を鳴らしただけだった。














「そういえば・・・何でいきなりあんなこと・・・言い出したわけ?」
「Ah?まだ気にしてるのか?」

場所は少し移動して、部屋の押入れ。
国主が押入れに隠れてるなんて思うわけねーだろ、と言う政宗の一存により決定。
(最初は屋根裏と言い出したが、忍の邪魔になると要が全力で止めさせた)

「気にしてるって言うか・・・唐突過ぎて・・・」
「理由が欲しいってか?」
「そう言うわけ、じゃない、けど・・・」

薄暗く、辛うじて互いが見える程度の狭い空間。
そんな所に何が悲しくて、男2人でいなきゃいけないんだ。
内心穏やかではないのを誤魔化すために、話題を作ってみたがあまり落ち着けない。
むしろ押入れと言う、狭くて薄暗い空間がジワジワと要を追い詰め始めていた。

「何だハッキリしろよ」
「う、あ・・ごめん・・・」

思わず俯いた要の背に、つぅ、と背に冷や汗が流れる。
このままじゃマズイ、と頭が警告するが、身体は為す術も打つ手もなし!と言わんばかりに動こうとしない。
とその時、タダでさえ暗い視界がさらに暗くなった。

「・・・おい、具合でも悪いのか?」

身を乗り出した政宗が俯いている要に手を伸ばす。

「っ、やめっ・・・!!」

反射的にその手を叩き落し、身を仰け反らせるが場所が悪かった。


―ゴンッ!!


「いっ・・・?!」

狭い押入れ、無理に身体を動かせば壁にぶつかるわけで。
鈍い音を立て、後頭部を殴打した要の意識は一瞬にして沈んでいった。

「んなっ、おい!?」

これに慌てたのは勿論政宗。
叩かれた事で湧き上がった怒りも忘れて、要に近寄った直後、一気に視界が明るくなった。


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