落ちた先は蒼 | ナノ
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(3/3)

「それって殿様としてどうなの?」
「どうなのって聞かれても・・・」

何でも奥州を治める一国一城の主は、甲斐にいる好敵手と認めた武将と手合わせをしに行ったらしい。
あろうことか城を抜け出して、さらには向こう先に連絡もいれずに。
それを突っ込めば、「何時もの事」と言われてしまい、冒頭の会話に戻る。

「片倉さんも大変だなぁ・・・」
「あのさ、一番大変なのは俺・・・。梵ったら直ぐにバレるって判ってるくせに口止め頼んでさ。小十郎は梵がいなくなれば、直ぐ俺のところに来て極殺でぶっ飛ばした後は、城の事俺に任せて自身も追いかけるために城を出ちゃうんだから。綱元もいるけど、はっきり言って許容量超えてるんだよ。梵は執務溜め込んで出て行くのが常習だから。本当大変だよ」
「あ、うん・・・お疲れ様」

地雷を踏んでしまったようだ、と要は頭の隅で考える。
綱元、と新しい名前が出てきたが、気にしている余裕は無い。
そして言いたい事を吐き出した成実は力尽きて畳に突っ伏している。

庭からそのまま部屋に上がって来てんだから、それをされると土が畳みに落ちる。

そう言いたいが、あまりの成実の疲弊っぷりに要は黙って湯飲みを差し出す。
今日は気分で何となく日本茶を用意。茶葉は勿論、厨から頂戴した。

「要さぁー、今度梵に言ってみてよ」
「え、何を?」
「出て行くなら執務終えてからにしろ、ってさー」
「・・・嫌だよ、俺死にたくないから」

素性を話したとは言え、要がこの城で何の力も権力も持っていないのに変わりない。
そんな状態で一国の主に物申すなんて、身分知らずもいいところだ。

「大丈夫だって、殺されたりしないよ」

・・・あれでも梵は要の事気に入ってるし。

ズズーッと寝そべったままお茶を啜り成実が呟くが、要は苦笑で答えざるを得なかった。

「・・・あれ?甲斐を治めてるのは、えぇと武田信玄だっけ?」
「そう、正解。甲斐の虎がどうかした?」
「いや、なんでもない・・・」

言いながら要は首を傾げる。
成実はそんな様子に不審がるが城を任されている事を思い出し、お茶を飲みきると早々に要の部屋を後にした。
「おかしいなぁ・・・」

自分だけになった部屋で1人呟く。
高校時代は日本史を専攻していなかったので、あまり日本史は覚えていない。
でも武田信玄と伊達政宗は同じ時期に名を馳せる・・・と言う事は無かったような気がする。

ところがココはどうだ。
暇を見つけては、政宗や小十郎そして成実から教えてもらっている情勢図は色々可笑しい。
南には何処かの宣教師を思い出す名前の宗教者がいるし。
織田と豊臣が何と対抗勢力だという。
そして北のいつきも一応勢力図に組まれていたのには、驚きを隠せなかった。

というか考えてみれば、勢力図を知る以前に可笑しい箇所はいくつもあった。

まず身長。
日本人が長身になって来たのはこの2,30年。
要自身175cmあるかどうかなのに、思えば政宗と視線がほぼ同じ高さだ(悔しいが、僅かに政宗の方が上だ)。
で、その政宗自身がやたらと流暢に英語を喋る。
少なくとも日本史で「伊達政宗は英語を喋っていた」と習った記憶は要には一切無い。
極めつけは六爪流とか何とかで、刀を6本腰に差しているところだろう。


今更だけど、違う世界の戦国時代に来たのかもしれない。


ボンヤリとお茶を啜る要の脳裏にそんな考えが過ぎった。





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今更過ぎるほどの遅い現状認識。
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