落ちた先は蒼 | ナノ


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「要っ!要!」
「う、わっ?!」

夕餉後、スパーン!といきなり響いた音に、自室で寛いでいた要は思わず跳ね上がる。
そんな要に構う事無くズカズカと音の発信者…成実は部屋に入ると、要の目の前に腰を下ろした。
ただならぬ成実の雰囲気に要も慌てて、姿勢を正して向き直る。

「ど、どうかした…?」
「梵から聞いた!俺にも頂戴!」
「えーっと…?」

何か事件かと思えば、どうにもこうにも違ったようだ。
何のことかと要が記憶を辿る前に、成実が再び叫んだ。

「ころっけとかいうやつ!さっき廊下で梵とすれ違ったら、梵が滅茶苦茶自慢してきたんだよ…!」
「あ、あぁー…えと、ごめん」
「?!」

試作だから数が少ないうえ、保存が利かない。
だから政宗と小十郎にあげた残りは、手伝ってくれた女中に分けた。

そう言えば成実は人生終わった、と言わんばかりにその場に崩れこんだのだった。

「俺も…食べたかったのに…」
「…本当ゴメン。ミルクティ淹れるから許して、な?」

成実を宥めながら、要はカバンから例のミルクティを取り出した。
そしてお湯を貰ってこようと席を立ったその耳に「俺、今日は濃いめがいい…」と小さな声が届く。

「濃いめとか言わず好きなだけ飲んでいいよ。お湯、たくさん貰ってくるから」

まだ情けなく畳の上に崩れている成実に苦笑を浮かべながら、要はそう声をかけ、部屋を出た。


「…ずるい。けど、梵はみるくてー知らないもんね」


ようやく立ち直った成実はボソリと呟き、いそいそとお茶の準備を始めるのだった。







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うちの成実は甘党さん。
とは言え一般人レベルなので、幸村とは当然対抗できませぬ。
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