落ちた先は蒼 | ナノ
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結局、運よく通りすがった女中に頼んで要は無事に厨に着く事ができた。
話を聞いていたらしい、厨担当の女中達は皆笑顔で要を迎えてくれた。
材料も1つを除けば、揃っているというから驚きだ。

「要様、何かあればお申し付けくださいね」
「え、そんな悪いですよ…」
「そんなことを仰らず!私達は“要様の手伝いをするように”と小十郎様から!」

拳を作り力説する女中に「いえ結構です」と言えるほど、要は強くない。
結局彼女たちに失礼の無い程度に、色々と頼む事にした。
(実際問題手際がわからない以上、本当は嬉しい申し出だった)

「すいません、これ裏ごしお願いします」
「判りましたわ」
「要様、油はこのような感じで?」
「あ、えっと…もう少し多めにお願いできますか?」
「玉ねぎ準備できてます!」
「うわ、早いですね。じゃぁ、それはココに…(な、なんだかなぁ…)」

指示をすれば的確に動いてくれる彼女たちを見渡しながら、こっそりと溜息をつく。
これでは「要監督、女中さん作」の料理になり兼ねない。

―下準備は彼女たちにお願いして、料理は自分でやろう!

要はそう、決心をした。









…と決心したのは良いが、彼女らも料理を作る身。
要の作るものには皆、興味があるようで気がつけば要の周りを女中達が取り囲んでいた。


「え、えぇと…これを玉ねぎと混ぜます」

…女中さんたちの視線が痛い。
料理教室の先生ってこんな気分なんだろうか…。

「混ぜたこれに塩・胡椒をまぶします」

時折、「あら」とか「まぁ」とか声が上がる。

「形を整えて…小麦粉・卵の順にくぐらせます。最後に…本当はパン粉を使うんですが、ないので砕いた麩を代用します」

…とっさに思いついたんだけど、代用してくれる…はず。
確か麩の原材料は小麦粉だった…はずだから。所詮俺の記憶は曖昧だ。
それより好奇心とか色々突き刺さった視線がやっぱり痛い。

「で、これを温まった油に入れる…!」

熱してもらった油の中にそれを入れたら、ジュワッと揚げ物特有のあの音。
そして「おおおぉ」と言う女中さんの声。
…なんか通販番組やってる気分になってきた。

「最後、良い色になったら引き上げます」

紙を敷いた皿に出来上がったそれを置いて、包丁で半分に切る。
中は綺麗なオレンジ色だった。

「カボチャコロッケの完成です。…味は保障しませんが」

とん、と女中たちに見えるように、要が皿を置く。
入れ替わり立ち代りで女中達がそれを眺めた後、どこからとも無く拍手が巻き起こった。

「素晴らしいですわ!」
「まさかこんなものが出来るなんて…」
「カボチャの良い香りがしませんこと?」
「あー…ありがとう、ございます?」

口々にかけられる賞賛の言葉に、戸惑いながらも要は素直に礼をする。
後はこれが政宗の口に合うかどうかが問題だった。


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