落ちた先は蒼 | ナノ
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「凄いなぁ…立派だよなぁ、俺もこんな立派な野菜作ってみたいな…」

収穫作業4割、野菜観察6割といった具合に要はのんびりと、カボチャを収穫していった。
そして何度目かの観察で、感嘆の声を漏らしていると、不意に影が差した。

「Ha,作れば良いじゃねぇか。出来たら、俺直々に料理してやるよ」
「ひゃっ、政宗、様?!」
「No,政宗だ。それから堅苦しいのは無しで行こうぜ?」

気配も無く、現れた政宗はそのまま要の横に座り込む。
…なんだかこのパターンは前にもなかっただろうか?

「う、あ…政宗、が一体なんの用で?」
「アンタの作業スピードが遅いからな、ヘバってるんじゃねぇかと思って見に来た」
「…そう、ですか」

余計なお世話だ、と文句を言いたいが言葉が咽喉元まで来て、引き返してしまう。
しかしこのままだと確実に、両者沈黙ルートになってしまうだろう。
ソレはまずい、と要は必死で頭を働かせる。

「…あ。さっき料理してやるって…」
「あぁ、言ったぜ?…もしかして俺の腕前を馬鹿にしてんのか?」

ギロリ、とあの苦手な目が要を捉える。
要は必死に首を横に振って、ソレは違うと訴える。

「そ、そうじゃなくて…。ま、政宗は殿様だから…殿様直々に料理するなんて、その、考えられなくて…」
「そう言う事か。仕方ねぇだろ、最初は兵糧の研究で始めたんだけどな、意外と面白かったからそのまま、な」

睨んだりして悪かった、と少し乱暴だが政宗は要の頭を撫でる。
成実と言い、政宗と言い…奥州の人は頭を撫でるのが好きなのだろうか?

「とりあえず今日はsimpleに煮てみるか」
「(本当に料理するんだ…)」

コンコンとカボチャを叩きながら、メニューを思案し始めた政宗の邪魔をしないよう、要は両脇にカボチャを抱えて、籠のもとへと急ぐ。
着いた先では丁度小十郎が新しい籠を用意していたところだった。

「かっ、片倉さん!これもお願いします!」
「あぁ。ところで政宗様と何を話していたんだ?」
「え?えーっと、政宗って呼べと。後堅苦しいのは無しだと。今はあっちでカボチャのメニュー…献立考えてます。邪魔になるかと思って、こっちに来ました」
「そうか」

要からカボチャを受け取りながら、小十郎はこっそり安堵した。
とは言え要の言ってる内容は会話、というより政宗の発言だが。
とりあえず会話があっただけでも、大きな進歩だろう。
(実は今まで要と政宗に会話が成立した試しが無い)

「俺もこんな立派な野菜作れるかなぁ…」
「出来るんじゃねぇか?こないだやった白菜、育ってんだろ?」
「うん。種貰って蒔いて…早いのはもう芽が出てますよ」

後はー…と思い出していると、目の前にカボチャが現れた。

「Hey,要。俺を置き去りにして小十郎と楽しくtalkか?」
「うわ、政宗…そんな俺、そういうつもりじゃ…」

“メニューを考える邪魔になると思った”
ただそれだけの事が言えず、要が口ごもっていると、小十郎が助け舟を出してくれた。

「政宗様。要からカボチャの献立をお考えになっていたと聞いておりますが?」
「あぁ、それな。煮るのも考えたが、それを…」

小十郎の話に上手く食いついた政宗に要は内心、ホッとする。
そのまま「自分の畑に行く」とジェスチャーで小十郎に伝え、その場から離れた。


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