落ちた先は蒼 | ナノ
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(3/3)


「・・・・」

一言喋りだせば、後はあれよあれよと言う間に自分でも驚くぐらい言葉が繋がった。
もっとも喋ることに必死で、3人の顔なんて見る余裕なんて無かったのだが。
しかしそれが終わった今、沈黙が痛い。

成実はポカンとした表情で固まっている。
小十郎は何かを考える仕草のまま、動こうとしない。
そして・・・政宗に至ってはその表情すら読めなかった。

生き延びれるか、殺されるか。

要の命は政宗が握ってると言って過言ではない。
緊張のあまり、息苦しさを覚える胸を押さえ、今度は要は黙って皆の言葉を待った。
そして最初に口を開いたのは小十郎だった。

「政宗様・・・この小十郎、今の話は俄かに信じがたいものですが・・・」
「STOP、小十郎。それは俺も同じだ。けどよ・・・成実、お前は荷物を直接見たんだよな?」
「え、うん。でじかめとか言うの触ったけど、凄かったよ。多分四国の長曾我部でも、あれは作れないと思う」
「Hum・・・」

なにやら考え込んだ政宗をじっと要は待つ。
さっきから隻眼が忙しなく要の荷物と、成実の間を行ったり来たりしている。
その動きを追っていると、不意に目が合った。

「おい」
「っ、はい!」

声が裏返ったが、何とか返事は出来た。
そう安堵したのも束の間、今苦手なあの視線に射られている事に気づき、息が止まりそうになった。

「Ah-‥そんなに構えるなよ。2・3質問するだけだ、you see?」
「あ、I see…」

英語で聞かれたから、英語で返した。
ただそれだけなのに、政宗はニヤリと笑い、要の背には嫌な汗が流れた。

「1つ目。アンタのいた時代…平成と言ったか?皆南蛮語を話せるのか?」
「南蛮…?英語、ですか?英語は教育の一環で…殆どの人が習います」
「ok,2つ目。平成の世は平和か?」
「……平和、ですよ」

嘘、では無い。
日々凄惨な事件は起きているが、血で血を洗うようなこの戦国乱世からすれば可愛らしいものだ。
政宗の言う平和とは、戦はないか?と言うことだろう。
そう判断して要は首を縦に振った。

「Hum…。ok、質問はコレで終わりだ。俺はアンタの話を信じるぜ」
「…!」
「さすが梵!」
「なっ、政宗様!?」

一国の領主の信じる発言に三者三様の反応を示す。
要は聞き間違いじゃないか?と目を見開いた。
成実は自身が要が伊達にとって、危険視するべき人間でないと思っていたようで政宗の発言を素直に受け入れた。
そして政宗の言葉に難色を示したのが、やはりと言うか小十郎だった。

「hey,小十郎。今更だけどな、俺はコイツの事最初から危険視しちゃいねーよ」
「政宗様、貴方という御方は少しはご自分の立場を…!」
「STOP!そうやって俺の身を案じてる小十郎、アンタが今の今までコイツを殺しちゃいねーんだ。それに成実だって伊達の武将だ。コイツが不穏な動きすりゃ斬り捨ててただろうよ。違うか、成実」
「えー、あ、うん。そうだねー」

ヘラリと成実が笑うが、それは武将の顔そのものだった。
そんな成実を見た後、政宗は上座から降りて小十郎たちの傍に歩いていく。

「第一、小十郎。俺はコイツに畑をやったって成実から聞いたぜ?普段の小十郎なら、そんな事しねぇだろ?」
「それは…」

まさか「同じ野菜好きとして親近感を持ちました」など、一体誰が言えようか。
しかしそんな小十郎の内心を知ってか、知らずか政宗はニヤリと笑みを浮かべ

「小十郎、実はコイツの事気に入ってるんだろ?」

さらりと言ってのけたのだった。

「つー事だ、俺は改めてアンタを歓迎す、る…ぜ?」
「え、あれ?要…!ちょ、どうしたの?!」
「お、おい?!」

3人の視線の先にはその場に倒れこんでいる要の姿。

「えぇと、そうだ!梵、医者呼ぼうよ、医者!」
「oh.ok…!」
「お待ちを。その必要は無いかと思われます」
「ah?どういう事だ、小十郎」

隻眼を訝しげに細めた政宗に、小十郎は呆れたと困惑を増せたような声で一言。

「ただ緊張のあまり、気絶しただけのようです」

そう告げたのだった。


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