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「・・・っ?!」
すぐ近くから聞こえた落雷と悲鳴の音に要の肩がビクリと跳ね上がった。
おかげで手にしていた湯飲みが落ちかけたが、其れを寸でのところで成実が受け止めてくれたので被害は出なかった。
「あ、ありがとう」
「気にするなって。それより梵、捕まったみたいだね」
音のした方を眺めながら、成実が湯飲みを啜る。
その湯飲みからは甘い香りが漂っていた。
「うん、相変わらず美味い」
「インスタント・・・即席のだけどね」
シャカシャカと要が「ミルクティ〜お湯を入れて混ぜるだけ〜お徳用30杯分」そう書かれた袋を振った。
「俺、甘いの好きだからね。って、それ中身減らないよなぁ」
「・・・普通は減るはずなんだけどな」
2人でこうやってミルクティを飲むことは今に始まったことではない。
でも、いま要が持っている袋は開封した時と同じだけの粉の量を保っていた。
最初こそ不審がっていた二人だが、何時までも飲める。と言う楽観的な思考の下、今では全く気にしていない。
「なぁ、要。俺、その中身見たいんだけど」
「え、あ・・・リュックの中か?」
「うん、その中身。みるくてーだけじゃないだろ?入ってるのは」
例えば食料とか?
そう成実が聞けば、判りやすいほどに要が動揺した。
そしてカマをかけた筈の成実は当たったことに、僅かにだか驚きを隠せなかった。
と言うのも要は此処に連れて来られた頃、1週間食事に手をつけなかった。
1週間食事をしなければ、人間やつれる事ぐらい成実も知っている。だけど、要は深刻な程やつれた様子は全く見せなかったのだ。
「う、あ・・・それはちょっと・・・でも、成実だし・・・」
成実だし、って何だよ!と叫びたいが、此処で荷物公開を渋られると困るので成実は黙って耐える。
沈黙なんて彼が苦手とするものだったが、背に腹は変えられない。
あーだの、うーだの悩んでいた要だが、やがてリュックを成実の前に差し出した。
「成実だから見せてやる。その代わり、触る前に声・・・かけてくれ」
やった!
声には出さなかったが、成実は内心で大きくガッツポーズをとった。
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