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迷彩と縮む距離
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「そういえば凛様の足のお怪我が治りましたら、宴を開かねばいけませんねぇ」

「・・・宴?」


医師から処方された薬湯を飲み干した凛が怪訝な表情を浮かべる。
(とは言え半分は薬湯の苦さから来る表情なのだが)
空になった器を受け取り、代わりに口直しのお茶を渡す桜はさらに言葉を続けた。


「えぇ。凛様はこの地を護ってくださっている御方ですもの。持て成しをしないというのは失礼ですわ」

「いえ、別に私そういうの・・・気にしないので」

「凛様が気にされなくても、周りが気にしますわ。土地神でいらっしゃる立場を差し引いても、凛様が客人でいらっしゃる事に変わりありませんもの」

「・・・はぁ」


言葉の裏に拒否権が与えられていないことを知り、凛は溜息交じりに息を吐いた。
宴の空気は確かに好きだが、宴の中心にいたいとは思わないのが凛の本音だ。


「お医者様もあと4,5日で歩いても良いと仰ってましたし・・・。先にお召し物を見立てましょうか」

「え、わざわざ・・・ですか」

「えぇ生憎ですが、この屋敷に凛様ぐらいの年頃の女子はおりませんゆえ、お古とかそういった類はありませんの。仮にあったとしても、客人にお古を着ていただくなんて失礼なことは出来ませんし。何よりお館様がお許しにならないでしょう」


ニッコリと良い笑顔で、けれども桜はバッサリと凛が言外に乗せた思いを両断した。
着るものの新調は避けられないと知り、今度こそ凛は苦笑いを浮かべた。
その表情が何処か引きつっているのは気のせいではないだろう。


「折角ですから、凛様の可愛らしさが引き立つようなものが良いですわね」

「・・・桜さんが選びたいだけじゃないんですか?」


凛の呟きに、桜は笑顔を浮かべると空になった器と共に退室した。


「・・・図星?」


1人部屋に残された凛が首を傾げるが、答えは返ってこなかった。


 


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