×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 
思わぬ暴露事件
(2/3)

「忍だよ」


佐助から告げられたのは、短く単純で、しかし明確な言葉。


「彼女、俺様とかすがと同じ里の出身で、俺様直属の部下なの。腕も立つからね、姫さんの傍に置くには適任だったわけ」

「それだけ?」

「それだけ」

「ふーん、そう」


あっさり終了してしまった会話。
その短さに極刑宣告を待つ罪人のように部屋の隅で正座していた桜は慌てて顔を上げる。
しかしそれより先に動いたのは今まで沈黙を貫いていたかすがだった。


「な、驚かないのか!?今まで女中として接してきた奴が忍だと言われたんだぞ?!」

「ええ、そうですね。今しがた、そういわれましたね。ついでに貴女の後輩とも」

「何を考えている?まさか騙していたからと桜に罰を与える気か!?」

「っ…!姉様、いいのです!本来であれば、これは凛様には露見するはずの無かった事。自ら露見させてしまった私には罰を受ける責があるのです!」

「お前はいいかもしれない!だが!」


かすがの言葉に桜は立ち上がり、かすがに駆け寄る。
どうもこうにも勘違いしているらしい2人に凛は面倒くさそうに前髪を掻き上げると、静かに口を開いた。


「罰与えたりとか考えちゃいないわよ」

「な、本当か?!」

「凛様…?」

「当り前じゃない。というか…もしかしたら桜さん一般人じゃないかもとは感じてたし」

「え、姫さんそれ本当?」

「ええ。何時だったかなー、まだ私が自力で歩けなかった頃よね。確か桜さんこう言ったのよ」


役に立ちたいのに、身体は動かない。あの時、怪我を負った己の未熟さをどれだけ悔やんだことか・・・


「後で考えれば変な話だと思ったのよね。普通の女中なら、体動かせないほどの怪我を負ったなら暇を出されるはずなのに、桜さんは今女中として働いている。後、己の未熟さって言うのも…、女中の仕事でなら己の不注意とかじゃない?後は…そうそう、浚われた時よ。部屋に戻って来て、佐助の指示に御意って言いかけていたのよね。畏まりましたって言い直したみたいだけど」


違う?と首を傾げながら問うた凛に桜は降参だと両手を上げた。


「完敗ですわ。凛様。よく観察していらしたのですね」

「…まー、観察?が本来の仕事みたいなものだから…」

「ほんと、よく見てるね姫さん…」


佐助から投げられる感心の視線に居心地の悪さを覚えながら、凛はかすがを見ればそれでも彼女は複雑な表情を浮かべていた。
どうやら今の説明でも彼女にとって納得するような回答ではなかったらしい。
思った以上に面倒だと内心溜息を吐きながら、凛はかすがにピッと指を突き出す。


「あのね。私も冷酷じゃないんですよ。仮に任務だったとしても、浚われた私を心底心配して力の限り抱きしめてくれるような人を身分偽っていたからと言って罰せられるわけないでしょうが。第一、これでも神様だから殺生したくないんですけど」

「…そうか。そうなら、いいんだ」


長く息を吐いた後の絞り出すような、かすがの声。
それでも浮かぶ表情は安堵の色で、やっと納得したかと凛も安堵の息を吐き出した。


「…私はそろそろ謙信様の所に戻る。桜、猿飛の下が嫌になればすぐに文を寄越せ。私から謙信様にご相談して、迎え入れてくれるよう口添えしてみるから。それから…」

「言わなくていいから。同じこと何回も言わせないで」

「…すまない」


そのまま最後、小太郎に視線を向けると一瞬にしてかすがの姿は掻き消える。
残された4人の中、最初に口を開いたのは佐助だった。


「…で、暴露現場にいつまでアンタはいるわけ?…風魔」

「……」

「…そういえば何故、風魔が凛様とそんなに親しくしていらっしゃるのかしら」


剣呑な視線を2人分受ける小太郎。
彼の腕の中にはいまだに凛が抱えられたままでいた。


「…桜さん説明するから。…小太郎、そろそろ下ろして」


一難去って、また一難。
今の状況はそんな感じだろうかと漠然と凛は考えながら事の経緯を説明し始めた。


 


目次へ