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素直じゃない
(2/5)


「全く〜。大将も旦那も片付を誰がするとおもってんだか・・・!」


修繕費だって馬鹿にならないのに。などなどなど。
愚痴を零しながらも、素早く的確に佐助は部屋の復元作業に勤しんでいた。


「っていうかこれ、最早忍の仕事じゃないよね!時間外労働もいい所じゃん!」

「俺様、もう少し待遇良くなってもいいと思うんだけど」

「そうなればまずは昇給だよね、何で俺様の給料が旦那の甘味代に消えていくわけ?」


上司がこの場にいないの良い事に腹の内をどんどん暴露していく佐助。
上司もいないが、部下もいないため彼を止める者は誰もいない。


「まぁ待遇云々よりは・・・あっちのほうか」


何処から取り出したのやら、箒の柄に肘を乗せ視線だけを動かす。
その方角にあるのは凛の部屋。


「あそこまで嫌われるとはねぇ〜」


嫌悪と言うよりは拒否か無視に近しいのだろうが。
まぁ凛の素性が完全に把握できてない以上、佐助も警戒せざるを得ないのだ。
例え上司の上司である信玄が、凛に全幅の信頼を寄せていたとしても。
悲しいかな、疑うことが彼の佐助の役目なのだから。


「これでも最初に比べりゃ控えめなんだけどなー」


のんびりと縁側で甘味を食べる姿から上司達に害を及ぼすとは考えにくい。
とは言え相手は土地神。人の想像の枠を超えているのは間違いない。
相手の力量がわからない以上先手を打つことも出来ないが、後手をとっても危険が伴うのは判っていた。


「あー、もう。・・・ってどうしたの?」


不意に佐助の纏う気が忍隊のそれに変化する。
彼の背後には片膝を立て、頭を垂れる部下がいた。


「長の耳に、と思い報告に参りました」

「何?どっかが仕掛けるって?」

「否、その類ではございませんが」

「見れば判るだろうけど、俺様忙しいから。報告は手短にね」


手伝ってくれるなら話は別だけど。と皮肉るが、部下は苦笑を浮かべ首を横に振る。
そして淡々と、佐助に報告を行なった。


「・・・へぇ、そういうこと。ありがとうね」

「いえ。ところで長?」

「何?」

「庭師などは手配した方が宜しいですか?」

部下が指差す先は未だに片付が手付かずのままの庭。
砂利は適当に直せば誤魔化せるだろうが、流石に折れた木や崩れた岩灯篭を修復する術を佐助は持っていない。


「あぁ、うん・・・。頼むよ」

「御意」


その言葉を最後に、背後の気配が消える。


「・・・俺様、庭師か大工に転職しようかなぁ」


箒を持ち直し不意に呟かれた言葉は、諦めの色を交えて空気に溶けていった。



 


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