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目を覚ました場所は
(2/4)

「・・・」


暫く無音が続き、上を向く事が辛くなった少女は下を向いた。


「なーんかが・・・いたような気がしたんだけど・・・」


気のせいかな、と頭をかく少女。
諦めて布団に潜り込もうとした時、上でカタリと音が鳴った。


「なーんでバレたかな」


恐らく男なのだろう、軽い口調の低い声が少女の耳に届く。
思わず声がした方向に振り向けば、違う違うと言われ直後強い力で押し倒された。
そして首筋に宛がわれた冷たい何か。


「ねぇ、何で判ったの?」


聞こえる声に少女はただ瞬きを繰り返す。
質問の意味がわからないのではなく、何故この状況になったのかがわからないのだ。


「何かいたような気がしたから」

「へぇ・・・“気がした”んだ」


何も見えない中、本音の読めない声が聞こえる。
よく判らないが相手は怒っているのだろうか?
相手の纏う空気にどこか刺々しさを感じる。
ならば何が相手を怒らせたのか?
それがわからない少女にとって、今の状況は次第に不愉快なものへとなっていった。


「まぁ俺様がいたのがバレたなら仕方ないや。ねぇ、アンタ何者?」

「・・・普通は己を名乗ってから、聞くんじゃないんですか?」

「子どもの癖に言うじゃない」

「子ども、ですか。生憎、私外見ほど幼くないんですけど」

「へー、じゃぁいくつよアンタ」

「一番古い記憶は鎌倉の北条が新田軍に潰された事ですね」


具体的な年数を出さないのは、少女の機嫌がよくないから。
それでも相手には伝わったのか、嘘だろ?と言う呟きが聞こえた。


「嘘か真か信じるのは、貴方の自由です。・・・確認させる術なんて、私は持ってませんから」

「それさぁ自分で怪しい者です、って言ってるの気付いてる?」

「貴方が私を怪しいと思った時点で、私は怪しいものなのでしょう?」


疑われた時点で、弁解しても無駄。
暗にそう言う少女の機嫌は相当良くないらしい。
何も映さない瞳に微かな怒りの色が灯った。


「とにかく」


―いい加減どいてもらえないですか?


口にした言葉は思ったよりも冷たく響いた。
相手はやれやれと呟いた後、一応少女の上からどいてくれた。

「年齢はともかく、アンタ普通の子どもじゃないね」

「そもそも子ども、じゃないですから」

「じゃぁ何?」

「私、これでも甲斐の地を護る者です。人は土地神と呼びますね」


目の見えない少女は知らない。
その言葉を聞いて、目の前にいる相手が驚いた顔をしていることに。


(簡単だったなあ・・・)


相手は、男は、猿飛佐助は目の前の少女がこんな簡単に素性を言うなんて思っていなかった。
上司の上司、武田信玄から聞いた嘘か真が信じがたい話に出てきた少女。
しかもただの少女ではなく、甲斐の土地神だと言うのだ。
忍びと言う職業柄を抜きにしても、信じられるはずがない。


(でも、今、あっさりと言った)


偽るにしては限度があるであろうそれを。
少女は簡単に口にしたのだ。自分がそれであるのが当然だと言うように。


(本物、なのかねぇ)


ポリポリと頬をかきながら、少女の目が見えていないことに佐助は安堵した。
今の自分は明らかに忍びらしくない顔をしている。
最も少女が自分を忍びだと知っているかは判らないが。


「あーっと・・・そのうち大将が来るからさ。
・・・ちゃんと待ってなよ?」


仮にもこの屋敷の主と会うんだから、寝ていては不味いと佐助は少女の身体を起こしてやる。
そして大将、と言う言葉にピクリと反応した少女に何かあったのかと1人勘繰った。






 


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