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09

《卵の温め方かい?そうだねぇ、何のポケモンか判っているなら、話は早いんだけど・・・その顔じゃ判らないんだね?》

「う、はい・・・ごめんなさい・・・」

《あ、ごめんごめん、責めてるわけじゃないんだよ。そうかぁ、判らないならそうだなぁ、まず卵を冷やさない。これが大事だね。逆に温めすぎても逆効果だから、サツキちゃんなら薄手の毛布にくるんで抱えていれば丁度かな?》

「ふんふん・・・」

《本当は携帯用の孵卵器・・・えっと、卵を孵す入れ物を使えばいいんだけど、今から手配…用意しても数日はそのままだしね。それにガラス越しに眺めているより、自分で抱えていたいでしょ?》

「・・・で、出来るなら」

《だろうね。じゃぁ、また判らないことがあったら連絡してね。あ、それから何のポケモンが孵ったのか教えてくれると嬉しいな》

「それはもちろん・・・!それに色々教えてくれてありがとうございます」

《そんなお礼言われるほどじゃないよ。じゃぁ、またね》

「はい。また連絡しますね」


プチンと通信が切れる。
おじいちゃんの知り合いだという、ウツギ博士。彼はポケモンの進化に詳しいから、聞いてみてはどうだろう?とおじいちゃんが連絡を取ってくれた。
てっきりおじいちゃんみたいな年輩の人を想像していたら、すごく若くて逆にびっくり。
でも知識は本物で(見た目は)まだ幼い私に判るように言葉をかみ砕いて丁寧に教えてくれた。


「サツキ、終わったのか?」

「うん。終わったよ。えっとね、毛布でくるんで暖めておいたらどうかなって」

「じゃ、これぐらいでどうだ?」


通信が終わるのを待ってひょっこり顔を見せたグリーン。
その彼の腕の中には綺麗に折り畳まれた1枚の毛布。
びっくりするぐらいの準備の良さにグリーンを見れば、彼は誤魔化すように乱雑に頭を掻いた。


「悪ぃ。聞いてたって言うか、聞こえてたって言うか・・・」

「良いよ。怒ってないもの」

「そっか、なら良かった」

安心したように笑みを浮かべるグリーンにつられるように私も笑顔になる。
差し出された毛布を広げて、丁寧にたまごを包む。
それを落とさないように気をつけながら抱えたら完成。

「いつ孵るかなー」

「さぁなぁ。でもたまに音がするんだろ?」

「うん。たまーにね。ちょっとだけ音がするの」

「じゃもうすぐだろうな」

「・・・寝てるときだったらヤだなぁ」

「・・・そればっかりは・・・どうしようもないんじゃないか?」

「だよねー」

初めて貰った初めてのポケモンの卵。
初めて出会う瞬間を見逃すなんてもったいなさすぎる。

「・・・出来たら、私が起きてる時間に孵化してね?」

「サツキ・・・」

隣でなにかいいたそうなグリーンを無視して、腕の中の卵をなでればちょっとだけ返事代わりのように卵が揺れてくれたような気がした。




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