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08

レッドが行方不明になった事件はニュースとなって、カントー全土を騒がせた。
それでもポケモンリーグの協会が「今回の事件の原因は過剰すぎる報道にも非があった」と指摘したせいか、リーグ制覇のときほど報道陣はやって来なかった。

そして報道陣の数が日に日に減り、0になって暫くしたある日。


「サツキちゃん、誕生日おめでとう!」

「おめでとう、サツキちゃん。8歳ですって、早いわねぇ・・・」

「サツキ、誕生日おめでとうな!」

「誕生日おめでとう、サツキ」

「わわ、みんなありがとう・・・!!」


目の前には沢山のご馳走。
レッドのお母さんと、グリーンのお姉さんナナミさんが作ってくれたもの。
更にお祝いしてくれるのはグリーンと、オーキドのおじいちゃん。


「もう、本当にレッドも。せめてサツキちゃんの誕生日祝ってから居なくなればいいのに!」

「ホントだよなー。サツキもレッドに祝ってもらいたかったよなぁ?」

「うん。居て欲しかった、な・・・」

「じゃぁ帰ってきたら、レッド君には一杯お祝いしてもらわなきゃね」

「そうじゃの、それがいいの」


つとめて明るく振舞うレッドのお母さん。
彼女が明るくするから、私たちもレッドが居なくなったことを心配はするけど、悲観はしない。
それに・・・誰にも言ってないけど、レッドは「会いに来て」と行った。
つまり何処かで待ってくれていると言うことだから、私は絶対会いに行く。
旅に出るにはあと2年。・・・超えられない時間の壁が少し悔しい。


















「・・・あら、来客?」

「どれ、ワシが出ようか」


不意に来客を告げるベルが鳴った。
その音におじいちゃんが席を立ち、玄関に向かう。
暫くすれば玄関から私を呼ぶおじいちゃんの声がした。


「どうしたの?おじいちゃ・・・!!!」


白衣を着たおじいちゃんの後ろ。
チラリと見えたその姿に思わず言葉を失った。


「大きくなったな、サツキ。・・・俺の事、判るよな・・・?」


記憶に残る少年らしさは殆どないけれど、どこか昔の面影があって・・・。
テレビや雑誌で見るあの洋服じゃなくて、完全な私服だけど・・・。
私よりほんの少し赤い髪、見間違うはずが無い。


「・・・にい、さま?」


恐る恐る呼びかければ、安堵したような、嬉しそうな笑みを浮かべて両手を広げてくれたワタル兄様。
思わず飛び込めば、そのままぎゅっと抱きしめてくれた。


「どうしたの?その、忙しい・・・んじゃないの?」


ついこの間の手紙にも書いてあった、忙しいって。
2人のチャンピオンが誕生しながらも実際はチャンピオン不在のまま。
リーグの立場的にも面子がどうのこうのって、お昼のニュースが騒いでいた気がする。


「確かに忙しいよ。でも、妹へのプレゼントを渡しに来る時間ぐらいあるさ」

「え?」

「・・・8歳の誕生日おめでとう。サツキ」


手渡された両手で抱え込むぐらいの大きさの・・・卵。
触れれば、中で何かが動いているのを感じた。


「これは・・・?」

「ポケモンの卵さ。何が産まれるかはお楽しみ、・・・と言っておこうか」

「ポケモン・・・。そしたら、産まれた子は・・・私のポケモン・・・?」

「あぁ。・・・良いですよね?オーキド博士」


兄様の視線がおじいちゃんに移って、私もつられておじいちゃんを見る。


「勿論じゃ。サツキよ、卵を、生まれてくるポケモンも大事にするんじゃぞ?」

「・・・はい!」

「喜んでくれて何よりだよ。じゃぁ俺はリーグに戻るから。・・・サツキ」

「兄様?」


名前を呼ばれて、首を傾げた私に兄様が視線を合わせるようにしゃがみ込む。
そして頭を撫でながら一言。


「いつかバトルしような」

「・・・うん!!」


私の返答に満足したのか、最後にもう一撫ですると兄様はカイリューを出して夜の空に溶け込んでいってしまった。


「良いプレゼントを貰ったの」

「うん。私、旅に出られるなら・・・この子といっしょに旅する」



そしていつか四天王の大将である兄と戦いましょう。
そして強くなって何処まで待っている幼馴染に会いに行きましょう。



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