06
「・・・はい?」
その日の夜、確かにグリーンは戻ってきた。
但し“前チャンピオン”として。
そして“現チャンピオン”はと言うと・・・。
「・・・ただいま」
「あ、うん・・・おかえりなさい」
旅立ったときにはいなかったピカチュウを肩に乗せ、何事も無かったように挨拶をするレッド。
まさかのまさか、レッドが現チャンピオンになっていた。
「お、おめでとう?」
「・・・ありがとう。あ、ピカチュウさわってみる?」
「い、いいの?」
「うん」
はい、と渡されたピカチュウを受け取る。
チャァと可愛らしく鳴くピカチュウ。
でも四天王+グリーンの計5連戦を勝ち抜いてきた子だと思うと、可愛いだけじゃ済まされない。
「で、さ。サツキ。おれらに隠し事してただろ」
「・・・何のこと?」
今の今までソファで落胆していたグリーンが復活。
そして投げかけられた質問に「来たか」と私は内心身構えた。
「おれ、知らなかったんだけど」
「・・・ぼくも知らなかった」
「わたしも・・・何のことか知らないんだけど・・・」
あくまで誤魔化す。
彼等の言いたい事は分かってる。
でも私から先に言ってしまうと、隠していたと認めることになってしまう。
「兄ちゃんのことだよ、サツキの」
「四天王だったとか・・・聞いてない」
あ、案外サラッと言ってくれた。
コレは正直助かったかもしれない。
「・・・だって、わたしも知ったの・・・さいきんだもの」
「え?」
「はぁ?」
「・・・兄さまの手紙に、兄さまが四天王だなんて書かれてなかったんだもの」
実際兄さまから届く手紙に、四天王の事は何も書かれていなかった。
強いて言うなら、最近バトルの相手が手応えの無いトレーナーばかりでつまらない、とかそれぐらい。
生憎私はその程度で兄さまが四天王だと見抜けるほど、頭の回転はよくない。
「じゃ、なんで知ったんだよ・・・。その、ワタルさんが四天王だって」
「二人が7つ目のバッチをゲットしたころかなぁ・・・。そういえばリーグの四天王ってどんな人たちかな、って思って・・・。調べたら・・・」
「・・・四天王だったって知った?」
「・・・うん」
「そっか。なら仕方ねぇな」
「ぼくらの・・・いなかったときだもんね」
だからそんな顔するな、とグリーンが私の肩を叩き、レッドが頭を撫でてくれる。
そして2人でアイコンタクトでもしていたのか知らないけれど、私の耳元で同時に
『ただいま』
そう、囁いてくれた。