03
この世界はポケモンを中心に回っている、と言っても過言ではないかもしれない。
ポケモンを持っていないと草むらに入っちゃいけませんとか。
テレビをつければ人と同じぐらいポケモンが出てきたりとか。
お店に入ればポケモンのためにアイテムが沢山売られていたりとか。
オーキド博士みたいにポケモンに関連した事で生計を立てる人が多いこととか。
全部が全部、私には真新しいことばかり。
毎日が新鮮でちっとも飽きが来ない。
それに空気が凄く綺麗で、少しづつだけど体調も良くなって来ている気がした。
「ねぇ。グリーンもレッドも、もう少ししたら旅に出るの?」
「・・・うん、もちろん」
「当たり前じゃん!じーさんからポケモン図鑑貰って旅に出るんだ!それでマサラ以外に住んでるポケモンを記録してくんだ。レッドにはぜってー負けないからな!」
「・・・うに頭なんかに負けないから」
「ちょ!テメェ・・・!まだそのネタ使うのかよ!!」
今日も穏やかな晴天の下、茶髪の子−グリーン−と黒髪の子−レッド−と一緒におしゃべりをする。
ココに来てもうすぐ2年、最近の話題はもっぱら二人の旅立ちについてばっかりだった。
ポケモンを中心にまわっているこの世界では「10歳になれば相棒のポケモンと一緒に旅に出られる」と言うルールがあるらしく、2人も例に漏れず旅立つらしい。
しかもオーキド博士の孫であるグリーンとその友達であるレッドはポケモン図鑑と言う、一般の人は到底持てないようなハイテクな機器も一緒に託されるのだとか。
「オレ、レッドよりも先に図鑑埋めてマサラに戻ってきてやるから!それで、サツキに図鑑見せてやるからな!」
「・・・はいはい。好きに言ってなよ」
「また始まった・・・」
グリーンが10喋るとしたら、レッドは2か3しか喋らない。
けれどそのバランスが丁度よくって、この関係が羨ましい。
彼等が旅立ってしまえば、私は一人ぼっちになってしまうから。
「なぁ、サツキ!」
「なぁに?」
「・・・。僕たちが旅に出ても、寂しいからって泣かないでね?」
「え?」
突拍子のないレッドの言葉。
思わず顔に出ていたのかな?と慌てて両頬に触れた。
「そのままだよ。1人が寂しいからって泣くんじゃねぇぞ?」
「な、泣かないよ!」
「・・・言ったね」
「言ったな」
目の前で緑と赤のアイコンタクト。
そしてニヤリと笑う二人が突き出したのはそれぞれの小指。
「泣かないって約束、指きりな」
「嘘ついたら・・・。・・・、・・・針千本飲ます」
「レッド・・・。貯めてから言うと何か脅されてるみたい」
「・・・そう?」
「あぁ。一瞬オレも冷や汗流れた」
「ふぅん・・・。とにかく指きり、ね」
―指きりげんまん、嘘付いたら針千本のーます。指切った!
その数日後。
真新しいモンスターボールと真新しいポケモン図鑑。
そして彼等の初めてのパートナーを貰って二人は旅立っていた。