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01



恵まれた人生だと思ってた。


病院に運ばれるたびに「今晩が山場です」と宣言される年数=年の数。
そんなどうしようもなく病弱な私を見捨てる事無く育ててくれた、大好きな母。

中間管理職で上司と部下の板ばさみで毎日辛いはずなのに。
私が入院するたびに毎日病院に顔を見せに来てくれた、優しい父。

私の看病に手間取られて母親から余り構ってもらえていないはずなのに。
私を憎むどころか「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と慕ってくれる、年の離れた可愛い弟。


そんな家族が大好きで。
だから「成人は無理」と言われた体を何とかして、20歳まで生きていくんだ。
それで皆に振袖姿を見せてあげるんだ。


そう決意を胸に秘めた日から、僅か数日後。



夕飯の後、突然胸を押さえて苦しみ始めた私は救急車で病院に運ばれて。
家族が大声で私に呼びかける中。



ピーーーーーと心拍を記録する機械が冷酷な音を立てた。



そして「私」と言う人生は18年で幕を下ろす。
生きていくための心臓がその役目を放棄してしまったせいで。





「ココ最近は具合も良さそうだから、また学校に通えるかしらね?」と頭を撫でてくれた母はその場に泣き崩れた。

「そういえば父さんな。今度昇進するんだ。そうしたらお前の好きなもの食べに行こうな」と病室で笑ってくれた父は動かなくなった私の体を抱きしめた。

「あのねお姉ちゃん!今度あたらしいゲームをママが買ってくれるの!一緒に遊ぼうね!」と無邪気な笑みで私に飛びついた弟は両親の異変に感づいたらしく、わんわんと大声で泣き始めた。




皆が私の名前を呼ぶ。
聞こえるけれど差し伸べる私の手も、返事をする私の声も皆には届かない。



「・・・親不孝者でごめんなさい。でもね、私、幸せだった。ありがとう」



届かない声で想いを伝える。
だんだん皆との距離が開いていく。まるで何かに引っ張られるような感覚。
あぁお別れなんだ。とボンヤリと理解した。
そのうち意識もボンヤリとしてきて、視界さえ混濁してくる。
やがて「私」の意識も視界もプツリと途切れた。




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