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貰った紅茶を美味しく頂いて、する事も無いから椅子代わりの棺で屋敷から持って来た本を読むことに少女は没頭していた。
読書に没頭していたら名前を呼ばれた気がして、でも本が面白いから生返事になって。
そうしたら目の前が銀髪と黒で染まっていた。


『え、テイカー…?』


バサリと何か落ちた音がしたが、それはきっと手元から弾かれた本が落ちた音だろう。
借り物なのに。と頭の隅で愚痴るが問題は今の目の前の現状だ。
押し倒された弾みで背中を打ったらしく、地味に痛い。
そして普段なら、緩やかに弧を描き笑みを浮かべている葬儀屋の口元が今は横一文字に結ばれている。
シエル達と出会う前、葬儀屋の下で一緒に暮らしていたがその間でさえ、今みたいに口を結ぶことなんてなかった。


「ねぇ。小生怒ってるんだよ?」
『…え?』
「呼んでるのに返事がないし。返事したと思えば心ここに非ずだし」
『あ、ごめん…なさい…』


怒られるという初めての状況に思考が追い付かなくなる。
そもそも葬儀屋が怒るという事自体を初めて見るので、この後どうなるのかが全く判らない。


「全く悪い子だねぇ…。悪い子にはお仕置きしないといけないんだっけ?」
『ひっ…!?』


横一文字だった口元が見慣れた弧を描く。
しかし普段なら安堵するだろうそれも、今はだたの恐怖の要因にしかならない。


「何にしようねェ…何が良いだろうねェ…」


鼻歌でも歌いそうな勢いで機嫌が急上昇していく葬儀屋。
そんな彼とは対照的に少女の気分は崖っぷち直前だった。
あくまでイメージだが笑いを求める葬儀屋の事だから、お仕置きも彼の笑いの為の無茶ぶりを強要されるような気がしていた。


「ねぇ?何が良いかい?」
『や、あ、の…テイ、カー…』


ニヤニヤと笑いながら葬儀屋は少女との距離を詰めていく。
冷静になれば葬儀屋の両手の埋まっている今こそ、彼の素顔を見るチャンスなのだが少女にはそんな余裕は毛頭ない。
ただ今後の自分の身の振られ方に恐怖し、構えるので精一杯だった。


「ぐふふ…何にしようねぇ…」


詰められる距離についに少女は身構え、思わず目をきつく瞑る。
頬に葬儀屋の髪が触れ、耳元で吐息を感じた。


『…っ…!』


どんなお仕置きをされるのか判らない。
ガチガチに硬直しながら身構えた少女の体はふわりと持ち上げられる。
そのまま下ろされたのは非常に覚えのある場所。


『…え?』


恐る恐る目を開ければ、そこは葬儀屋の膝の上。
見上げれば何かを耐えかねる様に肩を震わせる葬儀屋。


『テ、テイカー…?』
「っ、ぶほぉっ!」
『?!』


控えめに声を掛ければ、我慢ならないと言わんばかりに漏れた奇声。
少女が驚いている間も葬儀屋は1人ゲラゲラと笑いのツボにはまっていた。
そんな彼を膝の上で眺めていて、少女はある事に気付く。


『テイカー…?もしかして…遊んでた…?』
「ヒヒッ…!半分正解、半分外れー。ぐふっ…ちょっとした出来心だよ」
『なっ…』


呆気に取られている少女の頭を撫でながら笑いの収まった葬儀屋は続ける。


「だって。お仕置きって言ったらビックリするぐらい怖がるからねぇ。じゃー、悪ノリしちゃおうかなって。ごめんね〜?」
『ひ、酷い…!本当に怖かったのに…!』
「ヒヒヒ。ごめん、ごめん。ほら、も〜泣かないの」
『ぅー…泣いて、ない…』


泣いてない、というものの葬儀屋の服にしがみつく肩は震えていた。
流石にこれはやりすぎたかとほんの少し反省しながら葬儀屋はポフポフと少女を宥める。


「泣き止んでくれなきゃ小生が伯爵に怒られてしまうよ」
『…。…怒られちゃえばいいのに…』
「ヒヒッ…これはまたずいぶんと手厳しいねェ…」


少女が葬儀屋に怒られた時の対処法を知らない様に、葬儀屋も少女がヘソを曲げた時の対処法は知らなかった。










床ドン?棺ドン?
(葬儀屋の場合)









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ちびっ子悔し泣きの巻き
予定じゃ「テイカーのばかー!びっくりしたのに!」てなノリでしたけど…?
予定は未定って言いますもんね…!