誰が好き?



「ねぇねぇセンセはさ、B6の中でもし付き合うとしたら誰がいい?」
「……悟郎くん、私は教師なのよ?」
「わかってるよー。“もし”だってば」

ゆっくり落ち着いた、とは決して言えないが、一日の内ではまだ穏やかにあたるだろうランチの時間。
口火を切ったのは悟郎の一言だった。

「皆だって気になるでしょぉ?」

B6の面々を見渡すと、食事を続けながらもちらちらとこちらの様子を窺っているのがわかった。

「ま、まぁこの俺を選ぶのが当然だろう」
「なーに言ってンだカベ!オレ様に決まってンだロォ!」
「バカ言え清春。お前は先生に迷惑かけてばっかだろ!」
「……………」
「で、どうなんだ先生?」

答えないと後々面倒そうだ。
かといって誰と特定するのもいかがなものか。

「私は皆大好きだもの。誰か一人なんて選べないわよ」
「え〜!なんかそれポペラずる〜い!」
「ずるくなんかありません!」

頬を膨らます悟郎を見て、悠里はまずいな、と思った。
この手の話が好きな彼から逃れるには昼食をさっさと終えて、職員室に戻るしかない。
悠里はまだ半分以上残っている料理を見てげんなりした。
とにかく早く食べてしまおう。悠里は動かす手を速めた。

しかし、世の中そんなにうまくはいかないものである。





悟郎は考えた。
この話題をこのまま終わらすのはもったいない。
自分はもとより、B6全員が心の片隅で気になっていたことなのだ。

「よぉし、わかった!じゃあ皆でセンセに自分をアピールしよう!だからセンセ、絶対誰か選んでね!」
「ええっ!?」

何が「わかった」なのか悠里にはまったくわからない。
しかし悟郎は言い出したらきかないのだ。
その上何故かB6全員がノリ気のように見える。

「ふむ……まぁ今さらこの俺の素晴らしさをアピールするまでもないとは思うが。そうだな、担任。俺はお前の欲しい物をいくらでも買ってやれるぞ」
「それ、翼君のアピールというより、金に物言わせてるわよね……」
「オレ様はいつでも好きなだけイタズラしてやンぜェ?まぁ望まなくてもやってやるがナァ!」
「けっこうです!」
「俺は……そうだ、特別に歌をプレゼントしてやってもいい」
「う、嬉しいけど、甘さに耐えれる自信がないわ……」
「じゃあゴロちゃんは、ポペラチュッチュ&ハグ〜して自慢の彼女だよって紹介してあげる!」
「そんなの恥ずかしいでしょ!」
「俺はー……猫集会に参加させてやることできるぜ!」
「え、それすごい!って、参加して私にどうしろと」
「……召喚……集会……」
「……………!(あの爬虫類たちの集会ってこと!?それこそ私にどうしろと……!)」

一人一回ずつアピール(?)がすんだところで、悠里は額に手をあてため息をついた。

「もう!こんなアピールじゃ誰も選べないわよ。皆、本当に好きな子にもそんなんじゃ成功しないわよ!」

今後の彼らを心配しながらも、時計を見た悠里は「あら、もうこんな時間!」と慌ててバカサイユを出ていった。

「“本当に好きな子”……ねぇ……」

そう呟いたのは誰だったか。
全然気づく様子のない悠里に、今度はB6がため息をついた。



貴女が“本当に好きな子”なのに







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33100番キリリクで璃音様に捧げます!


2009/06/19
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