味は保証ずみ
魔の昼休み、と思い始めたのはいつごろだったろうか。
いや忘れもしない。
あのいきなり家庭訪問の次の日からだ。
「翼君!今日こそ食べてもらうわよ!」
「担任……いいかげんにしろ!」
あの日から悠里はこりもせず翼に弁当を作ってきていた。
しかし翼も断固と拒否するものだから、昼は翼vs悠里の攻防が繰り広げられている。
ちなみに悠里が勝てたことは一度もない。
「だって結局補習もちゃんと出てくれないし。だから……!」
「くそ、チクワめ!そんな目をしても食べんもんは食べん!」
「……今日はチンゲンサイだって入れてないわよ!?」
「しつこい!そして人の間違いを蒸し返すな!」
結局弁当を見ようともしない翼に、諦めた悠里は溜め息を吐いた。
少しくらい食べてくれてもいいじゃない、と何か黒い物体を自分の口に放り込んだ。
「……………」
信じられない、とでも言うように悠里を見る翼は、しかしなにを思ったか咀嚼するその唇に自分のそれをあてる。
驚き言葉を発そうとして開かれた悠里の口に舌を差し込み、中の食べ物(と思われるもの)を自分の口に移動させて飲み込んだ。
ついでに悠里の唇をぺろりと舐める。
真っ赤に染まった悠里を満足そうに見つめ、翼は顔を離した。
「ふむ、こうやってなら食べてやってもいいな」
「な、ななな何言ってるの!」
味だけはいいと保証されているから
姿さえ見なければ食べられるのだ。
(いちいちこんなことしてたら身がもたないわよ!)
―――――
その日から弁当を持ってくるのはやめたとか。
勝者、真壁翼ぼっちゃま。
相互記念で小雪様に捧げます!
2008/09/12