その行動の真意



清春は呆れて溜め息を吐かずにはいられなかった。
現在は補習中で、つい今しがた指定されたプリントを終えたところだ。
だというのに。

「……ナァニ寝ちゃってンだ、このブチャは」

生徒が頑張っている最中に居眠りとは、教師失格ではなかろうか。
あまりに幸せそうに眠っているもんだから水鉄砲でもぶっかけてやろうか、と思ったが止めた。
なんとなく悠里の寝顔を見つめる。

(ブチャのくせに……可愛い顔してやンの……)

しばらく見ていると悠里の眉間に皺が寄る。
悪い夢でも見ているのだろうか。

「う……ん。そこは……じゃなくて……was……」

清春はギョッとした。
まさか夢の中でも補習をしているというのか。
自然と笑みがこぼれる。

「ク、ククッ。しつけェ女!」

夢の中でも補習するんなら起きてやれ、と笑いながら清春はプリントを見直す。
そしてフと思い出した。
これを渡すとき、悠里は確かこう言っていた。

『徹夜して作ったんだから、遊ばずにちゃんとやってね?』

(あぁ、だから居眠りしちまったンか)

自分のために徹夜までしてくれる目の前の教師に、胸の奥が疼く。
悠里がここまで力を尽くしてくれるから、清春はそれに応えてもいいかと思えるようになったのだ。
その気持ちが恋心へと変わるのに、そう時間はかからなかった。


清春は未だ目を覚ます気配のない悠里の頬に触れた。
普段なら想いを乗せて触れることなど決してできないそこは、程好い弾力と滑らかさがあって、改めて女性を感じる。
自分はこんなに彼女を愛しいと思うのに、しかし彼女にとっては自分はただの生徒でしかない。

そんなことわかっている。

それでも彼女を欲しいと思ってしまう。
愛されたいと願ってしまう。
だから最近では真面目に補習にでるようにもなった。
悠里はまた騙してるんじゃないかと疑っているようだが。
自分の行動を信じてもらえないことがこんなにも辛いだなんて初めて知った。
こんなにも想いを込めているというのに、ちっとも伝わらない。
こうなる原因を作ってしまったのは自分なのだけれど。

なんだか堪らなくなって、その柔らかな頬に掠める程度のキスをした。



気づけ、気づけよバカ



オレ様の行動はオメェへの想いからきてるってことを。







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26100番キリリクで繋月禾杏様に捧げます!


2008/09/01
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