まぶたの上にキス
「ん〜?センセ、お疲れなのかな?」
最近真面目に補習に出るようになった悟郎は、今日も時間どおり教室に現れた。
いつものように悠里が微笑んで迎えてくれる、とウキウキしながら教室に入ったが、期待していたものは得られなかった。
誰もいない教室。
悟郎がいつも座っている席で居眠りをする悠里。
何故わざわざ自分の席なんだろうと考えると、悟郎の心臓がドクリと脈打った。
いつもなら、その前の席で向かい合わせになって補習をするのに。
居眠りするならその席ですればいいのに。
(なんで『ゴロちゃんの』席なの?)
夢の世界へいく前に、悟郎の席で何を考えていたのか。
それを思うとドキドキして息苦しいけど、なんだかくすぐったい。
少年らしい笑みを浮かべて、悟郎は悠里の顔をのぞきこんだ。
そっと頬に手を添えると、思った以上に滑らかな肌ざわり。
つい目がいった唇は、熟れた果実のようにみずみずしくて、思わず自分のそれを寄せそうになるが、なんとか思い止まった。
(さすがに、口はマズイよね)
できないと思ったら余計したくなるもので。
これ以上は自制が効かなくなってしまう。
その閉じられた瞳が憎くすら感じる。
だからありったけの想いを込めて。
まぶたの上に、初キッCHU!
早く目覚めて、お姫サマ!
2008/03/04