そんなこと知らない



教室には二人きり。
もう夕陽も傾きかけ、そろそろ補習も終わる下校の時間。
それは担任である悠里と一時の別れを意味する。
それを寂しいと感じる自分に、翼は苦笑した。

もう溢れるこの気持ちを抑えることができない。
彼女が困るのは目に見えている。
だけど知っていて欲しかった。

「先生」
「なに?」
「I love you」
「………え?」
「I love you」

二度も言うとさすがにわかったようで、悠里は顔を真っ赤にした。
そんな彼女を翼は目を細めて見つめる。

「な、なな何言ってるのよ翼君!」
「何って、お前を愛していると言ったんだが?」
「……………っ!」

悠里は目をうろうろと泳がせた。
いきなりの生徒からの告白に、どうしていいかわからない。
どうやって断ればいいか、それを必死に考えている様が手に取るようにわかって、翼は一度視線をおとした。
だがすぐに悠里を見つめる。
その瞳には情熱的な炎が宿っていて、悠里を動けなくする。

「好きだ」
「……私は教師で、翼君は生徒よ」
「関係ない」
「私、年上なのよ」
「それがどうした」
「でも……」

立場も年も、気にしない



そんなこと知らない



「卒業したら迎えに行くから、覚悟しておけ」

これがせめてもの妥協。







2008/01/14
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